須賀敦子から塩野七生を通りユルスナールヘ

ハドリアヌス帝の回想
マルグリット・ユルスナール
多田智満子 訳
白水社
1993年8月20日 発行

ユルスナールの名前は、もともと須賀敦子さんの著書から知った。
彼女のシャルトル巡礼の経験を書いた「大聖堂まで」などのエッセイに感動し、別の著書「ユルスナールの靴」という本も読んでみた。
そこでこの本の著者である、フランスの女流作家、ユルスナールが出てくる。
そのユルスナールの人生の道程を追っかけながら、須賀先生自身の体験(ベルギーのオスタンドの海、アテネの古代アゴラ、そしてサンタンジェロ城など)を絡ませている。
しかしそれだけではユルスナールの作品を読んでみようとは思わなかった。
そんな中、塩野先生のローマ人の物語の中で、ユルスナールの作品を引用しており、読んでみようという気になった。
ちゃんと予備知識を仕入れていたおかげで、それなりに理解しつつ読む事ができた。
ハドリアヌスというある意味難しい皇帝を、丹念な下調べの後、じっくりと熟成させた自伝に仕上げている。