ハンニバル戦記 ローマ人の物語Ⅱ

ハンニバル戦記
ローマ人の物語
塩野七生 著
1993年9月30日 第5刷
新潮社

塩野先生の「ローマ人の物語」が完結したとのこと。
新聞各紙で、インタビューが掲載されていた。
自分といえば、それ以外の先生の著書は数冊読ましていただいているが、この「ローマ人の物語」シリーズは、残念ながらちょうどガリア戦記にあたる所しか読んでいなかった。
これから楽しく、頑張って読んでいこう。
というわけで、今回はカルタゴの名将ハンニバルスキピオの戦いがメインのポエニ戦役となる。
今と同じく、その当時も戦争は悲惨なものだというものを忘れてはいけない。
今回でも常に直接の戦いよりも、持久戦的な方法を取るかで、更には降伏するかで議論が出ている。
そのようなな事象や戦略については興味深いといわざるを得ない。
ハンニバルについての私的なエピソードはほとんどないが、その中の数少ない引用が興味深かった。

「寒さも暑さも、彼は無言で耐えた。兵士のものと変わらない内容の食事も、時間が来たからというのではなく、空腹を覚えればとった。眠りも同様だった。彼が一人で処理しなければならない問題は絶えることはなかったので、休息をとるよりもそれを片づける事が常に優先した。その彼には、夜や昼の区別さえもなかった。眠りも休息も、やわらかい寝床と静寂を意味はしなかった。
兵士たちにとっては、樹木が影をつくる地面にじかに、兵士用の、マントに身をくるんだだけで眠るハンニバルは、見慣れた風景になっていた。兵士たちは、そのそばを通るときは、武器の音だけはさせないように注意した。」

トップに立つ人は、かくあるべしと思う。
このような彼から、スペイン、フランス、ナポレオンも苦労したアルプス越え、そしてイタリア転戦という辛い中でも、離れていく傭兵はいなかったという。

それにもかかわらず、結局カルタゴは滅亡し、地中海がローマにとって、「われらが海」となってしまったのであった。