放浪学生のヨーロッパ中世

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放浪学生のヨーロッパ中世 表紙

 

放浪学生(ヴァガンテース)のヨーロッパ中世
堀越孝一 著
悠書館 発行
2018年3月16日 初版発行

ヨーロッパ中世史を専門とする、堀越氏による著作です。このブログでは以前「パリの住人の日記」という氏の著書を扱っていました。
中世の秋やフランソワ・ヴィヨンなど、ヨーロッパ中世史の探索の経過を描いています。著者の大学時代から四年間の空白を経て大学院、そして教壇での思い出と共に、日本からフランスのパリを中心とするフランスやブルゴーニュなどでの現地調査など、放浪学生のごとく時空を彷徨続けています。
 
第1部 いま、中世の秋
Ⅰ いま、中世の秋
ディジョン近郊シャンモルの修道院跡にスリューテルの大作「モーゼの井戸」の残存部分「預言者群像」をおさめた六角堂を訪ねた著者。
薄明の濃霧のなか、ようやく探しあてたが、正直、なんの感動も湧かなかった。これは死んだモニュマンだ、灰色の死骸だ。そんな想いに気が滅入った。
それが、どうだろう、その数ヵ月後、ホラントのデン・ハーグマウリッツハイス美術館を訪ねた折、その背筋の冷えがようやくにしてゆるんだ。
この気分の変調の触媒となったのは、二点の彩色木彫であった。p9

Ⅱ ある日の講義

Ⅲ 青春燔祭

Ⅳ 歴史家の仕事
 
第2部 わがヴィヨン
1992年夏、マロ本を見る
パリのフランス国立図書館で、クレマン・マロが1533年に刊行した『フランソワ・ヴィヨン全集』を閲覧する筆者

「ヴィヨン遺言詩」と名付けられる詩群は原本を持たない。いくつかの写本と印刷本が残っているだけ。
「ヴィヨン遺言詩」と呼んでいるのは、15世紀の末、1489年に、パリの出版人ピエール・ルヴェが出版した印刷本『テスタマン・ヴィヨン』の表題に従っているだけ。
ルヴェ本ののちマロ本が出版されるまでに、パリやリヨンなどで二十種を超す刊本がかぞえられた。p191
 
Ⅰ 放浪学生

Ⅱ 旅立ち
わたしは「フランソワ・ヴィヨン」が実在したとは信じていない。この名は「ヴィヨン遺言詩」として知られる詩文集の主人公の名である。p259

Ⅲ 歌の場
BHVはHV、つまりオテル・ド・ヴィルの前のバザール、市場という意味 p368