柳田國男とヨーロッパ 口承文芸の東西 第2部~第3部

第2部 昔話・伝説の東西
a 昔話
1 聴耳
聴耳の構成は総じて、呪宝を得るまでの経緯と、その呪宝によって鳥などの動物の会話の内容を知り幸せに到達するまでとの、二段に分かれている。

2 歌い骸骨
骸骨が歌ったり歌わなかったりして恨みを晴らす

3 糠福米福
わが国の継子話の中で、ヨーロッパのシンデレラにもっとも近い昔話

4 姥皮
継子話のひとつ。姥皮を被ると老婆に変装できる

5 大工と鬼六
大工が鬼の名前を知り、危機を脱す

6 姥捨山
老親を山中などに捨てようとするが、結局は捨てることができない話

7 うつぼ舟
木をくりぬいて中を空洞にした舟

8 味噌買橋
夢告を信じる者が信じない者からその夢を譲り受けて財宝を発見する話

桜井美紀による「昔話『味噌買橋』の出自:その翻案と受容の系譜」

神話学者松村武雄の『世界童話体系』(大正13年から昭和2年にかけて刊行)の第7巻所載の「スワファムの行商人」を岐阜県高山市の教員小林幹が地元の昔話として翻案し、教育活動の一貫として作成した冊子に載せる

その話が飛騨地方の一部の人々の間で語られはじめていたのを、「丹生川昔話集」の執筆者三人(松岡浅右衛門・松岡つぎ・松岡みか子)のうちの誰かが「坊方の亡き母ナヨさん」という話者から聞いて「夢の夢」としてまとめる。昭和14年1月1日発行という奥付

昭和13年の年末に柳田はこの話を読み、すぐに「味噌買橋」を書いて、昭和14年の2月号の『民間伝承』誌上に発表

平成4年3月に上記の桜井により、この経過発表

(灯台もと暗しという感じですが、実際いろんな研究分野で、よくありそうな事例です)

資料a 柳田國男の昔話・口承文芸研究資料

b 伝説
1 木(植物)

2 石・岩

3 水

4 坂・峠(山・丘)

資料b グリム兄弟編『ドイツ伝説集』項目別一覧表

第3部 テーマ研究
1 柳田國男口承文芸研究

2 かぐや姫と白鳥処女:柳田國男『昔話と文学』覚書

3 オーストリア民俗学者オポルト・シュミットの民話論

アウグスティヌスは浜辺で何かを一心不乱にしている子どもの姿を見かける。何をしているのかとその子どもに尋ねると、その子どもは海の水を汲み尽くそうとしているのだと答える。それはまたシュミット自身の自画像である。
彼は民俗学の分野において、その根源とその根源から発する限りない広がりとに関わる自らの姿を、聖アウグスティヌスの前の子どもに重ねた。p390
(碩学の柳田でさえも、その子どもの一人だったように思えます)

4 『ペロール説話集』の書き込みについて
柳田のフランス語の蔵書の中で、ピエール・サンティーヴ著『ペローの昔話と類話とその起源(未開習俗と民間儀礼)』は、最も多くの書き込みがあり、読み込まれた形跡が残っている。

5 柳田國男のヨーロッパ口承文芸地図
柳田はきわめて組織的かつ体系的にヨーロッパの文献を収集し研究していた。
a.北欧1 アイスランド『エッダ』とサガの文学
b.ケルト
c.北欧2 フィンランド『カレワラ』  
d.ゲルマン系 ドイツ
e.東欧 ロシア
f.ガリア系 フランス 
ベディエ、サンティーヴ、セビオの三人
g.南欧1 ギリシャ/アルバニア
h.南欧2 スペイン
i.南欧3 イタリア 
ジーレ、ピトレの二人