幻の「ボルセーナのミサ」(ヘリオドロスの間、ラファエッロの間)

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このヘリオドロスの間のフレスコ画の中で、「ボルセーナのミサ」は修復中だったので見れなかったのですが、せっかくラファエッロをしっかりと見直す機会ですので、紹介しておきます。
もともとの絵のモチーフは、1263年にボルセーナで起こった奇蹟を元にしています。
その奇蹟とは、この地でミサをあげていた時、聖杯が神の肉体であることを疑っていた司祭の前で、その聖杯から血が滴り落ちた、というものです。
絵画で見ると、中央の向かって左側がその司祭だということです。
そして左側の人々全体が、そのミサの出席者で、驚いている情景が描かれています。
一方、右側は教皇側です。
上段の人物は、おなじみのユリウス2世です。
その後ろに司教や大修道院長、さらには枢機卿の駕籠かき、そして今でもヴァチカンで見かけるスイス人護衛兵(縞模様の服が目印)です。
彼らは「ヘリオドロスの追放」と同じように、あたかも現場証人のように立ち会っている、という設定になっています。
ユリウス2世教皇は平然と祈り、他の部下の者も自然な表情です。
彼らの立場からすると、「こんな奇蹟は当たり前だよ」という感じなのでしょうね。
左側の驚きようとは、いかにも対照的なのが面白いです。
そして若いスイス兵のひとりは、「ほらね」という感じでこちらを向いています。
このあたりのお茶目さも、いかにもラファエッロらしいと思うのですが、いかがでしょうか?