EUIJ関西第1回国際シンポジウムに参加して

EUインスティテュート・イン・ジャパン(EUIJ)関西のシンポジウム、「EU:過去・現在・未来」を聞きに行く。
神戸大学内の神大会館が会場である。非常に眺めのいいところであった。
第1セッションは「EUは世界の中心となりうるのか?」とのテーマで行われた。
ここではまず、ヨーロッパとアメリカの安全保障においての期待と不安について話された。
続いて、日米関係の歴史を振りかえる。時系列で解説していただいたのでわかりやすかった。
ここでは、シベリア出兵が、もともとアメリカに誘われたにもかかわらず、アメリカは途中で撤退し、日本は残り苦労した事、また朝鮮戦争後、米は日に再軍備を要求したが、吉田首相は断り、経済中心の国に進んでいった、などのエピソードが印象的だった。
続く第2部はEU憲法についてである。
ここではフランスとオランダの憲法批准失敗に触れた。国民投票の論点が憲法自身の否定というよりも、その国の内政に対する不満や、EU拡大に対する恐れにつながってしまい、EU憲法の否定につながってしまったことに触れていた。そして国民投票や選挙などでのポピュリズムの危険性について述べていた。
ただ、この失敗は、そう悲観的になるものではなく、EUの性質が違ってきた事(経済統合から社会統合へ)そして、加盟国も増えてきた事による、小さなつまずきにすぎないという感じだった。
第3部ではユーロの拡充についてだった。
ユーロは地域的な国際通貨であるが、まだドルには及ばない。なにせ単一国家の通貨でないため、政策の意思決定での早い行動や意思統一がはかりにくいなどである。しかしユーロランドは確実に育ってきている。今後のロシア・イギリス・中東の動きが大きな影響を与えるとのことだった。ドル一極支配のリスク回避のためにも、ユーロの成長がのぞまれる。
総括において、初代パリ日本文化会館館長、元NHKの磯村氏によると、EUの長い道のり、つまり今までの数々の難問を克服してきた背景には、ヨーロッパのアイデンティティに対する情念のようなものがあるのではないか、とのことであった。
そして、アイデンティティは多様性であり、EUの言語政策にも現れているとのことであった。返す刀で現在のアメリカのグローバリゼーションを批判し、特にアメリカの文化的支配に警鐘を鳴らしておられた。
最後のまとめで、EUを知る理由として、日本の巨大な財政赤字に触れ、ユーロ導入のため、赤字を減らしてきた国々を見習わなければならない、と主張した。
また小さな政府を賛美する昨今、ただ小さくすればいいのか、本当に必要なものを見極めるために、ヨーロッパの事例を研究すべきではないか、とも言った。
そして近隣諸国との関係でも、いい研究事例を欧州は提供してくれると述べた。
一ヨーロッパファン、EUファンとして、EUIJ関西などのような組織ができるのはたいへん嬉しく、心強いことである。
またこのようなシンポジウムを開いていただけるのもたいへんありがたいことである。自分もこのようなことに関わった事もあり、苦労してきたので、今回の様々な催し物においても、関係者の皆様のご苦労に深く感謝する次第です。