ローマ市長に逆風

ここに来て早くも、ローマ市長に対する批判的な日本語の記事が出てきました。イタリアの地方自治体の場合、市長を支持するグループが議会でも多数派に成れるので、東京都の知事のような苦労はないはずなのですが、それでも早々にこういう記事が出てしまうのは、市長個人の責任と、所属政党が寄せ集めの素人集団のせいかなと思ってしまいます

期待されたポピュリズム政党出身の若きローマ市長、無能さを発揮してローマはカオス状態

HARBOR BUSINESS Online 9月5日(月)16時20分配信

 38歳でローマ市、初の女性市長として期待されたビルジニア・ラッジ氏。美人市長としても話題になった彼女だが、市政の采配振りは就任僅か70日にして指揮能力の無能さを露呈して、ローマ市はカオス状態にある。

 彼女が籍を置くポピュリズム政党「五つ星運動(M5S)」の創設者グリッロ氏からも、「もっと通りに出て、市営の乗り物に乗ってローマ市民の気持ちを探ることが必要だ」と忠告される始末だ。(参照:「abc」)

◆イメージ戦略だけで候補を推したM5S

 M5Sがローマ市長の候補者にM5Sのビルジニア・ラッジ氏を選んだのは、彼女がローマ第三大学卒の弁護士で、話術は上手く、容姿も良く、しかも女性であったことが大きな要因だ。なにしろ、これまで女性がローマ市長に就任したことはなかったのだ。そのため、立候補すれば注目されて期待が集まり、票が取れるはずだとグリッロ氏は判断したわけだ。

 ポピュリズム政党M5Sは2009年の創設で、政権を担った経験がないこと。そのため、話題性だけで当選はしたものの、その後の政権運営の難しさがどれ程のものなのか党本体も想像出来なかったようだ。

 ましてや、ローマ市という大都市は、これまでも市政に裏切られた市民が政治家に切望感をもち、一方では市の多くの職員の間では怠慢が横行し、マフィアも市政に関与して来るという困難な状況にある都市だ。そんな修羅場に、容姿で市民を魅了させることで、政治の素人を市長として選ばせたのだ。その結果が市民を裏切るものになることは当初から明白であった。

 この70日間、何が起きていたのか。美人市長として就任し、いざ蓋を開けて見ると、行政の改革を実践する前に、彼女の指導力の無さが一挙に表面化したのだ。就任から70日にして助役と予算局長が辞任した。と同時に、市が運営している問題のゴミ処理と交通機関の公的企業のトップもぞれぞれ辞任したのである。

ローマ市の抱える問題 

 そう、ローマ市にとって、特に表沙汰になって市の行政を混乱に陥れているのはゴミ処理と交通機関の乱れである。

・ゴミ処理の問題

 ローマ市のごみ処理は、収納コンテナの利権にマフィアが絡むなどさまざまな問題を抱えている。収納コンテナの契約料は年間1000万ユーロ(11億円)とも言われており、これらは6億5000万ユーロ(715億円)あるというAMAの負債をさらに悪化させている。このひどい状況のせいで、ローマ市内にはゴミが溢れかえっており、トル・ベーリャ・モニカ地区では、子どもたちの間で5分間にどれだけネズミを見つけることができるかという、ポケモンGOならぬネズミGOなる遊びが流行っているんだそうだ(ちなみに、その事実を報じたニュースでは、5分間に25匹のネズミを見つけた)。(参照:「abc」)

交通機関の問題

 ATACという市営の交通機関運営組織は、13億ユーロ(1430億円)の負債を抱え、うち7億ユーロ(770億円)は、車両の取り換えパーツをこれまで提供して納品業者に未払いになっている金額だという。バスは故障も多く、清掃も不十分で(2300万ユーロも清掃につぎ込んでいるのに!)、15路線でバス車内にゴキブリが見つかったという。(参照:「abc」)

・道路事情の問題

 更に問題になっているのが市内の凸凹穴でいっぱいの道路事情の悪さである。それが理由で怪我をしたとして市役所に賠償請求が毎日3件あるという。それで、市役所が賠償金として毎年2000万ユーロ(22億円)を支払っているそうだ。(参照:「abc」)

◆無策を露呈し市民の心が離れる

 こうした問題について、M5S出身のビルジニア・ラッジ市長は選挙中の公約でこれらの諸問題を解決するのは容易であるかのような解決理論を流暢に語り続けたという。しかし、彼女が実際に政権に就くと、事態は容易ではないというのが分かったようだ。それで陣頭指揮を取って解決に取り組んでいるのかというと、そうではなく、右往左往しているだけ。涙を流しながら、解決に向け取り組んでいると語った場面もあったという。

 更に悪いことに、彼女は、財政支出節約アピールで、イタリアオリンピック委員会が招待したリオ五輪への招待航空券を公の場で破るという行動に出たのだが、これが裏目に出てしまった。ラッジ市長的には、財政赤字に苦しむローマでの開催に反対しているのだが、在ローマ企業にとっては大きなビジネスチャンスなわけだ。これにより、市民からだけでなく、ローマの企業家をも敵に回してしまったという。

 ポピュリズム政党候補者の直面した現実。果たして若きローマ市長は今後どのような方向に舵を切っていくのだろうか。

<文/白石和幸>

“美人市長”と話題のローマ市長に逆風 起用した幹部に不正疑惑、捜査把握していたのに一時「知らない」と説明

産経新聞 9月9日(金)20時41分配信    
 【ベルリン=宮下日出男】6月に女性初のローマ市長に就任したラッジ氏への逆風が強まっている。自ら起用した市幹部が不正疑惑で捜査中であることが発覚し、市長も一転、捜査情報を把握していたと認めた。ラッジ氏を擁し、汚職撲滅を掲げて支持を広げてきた新興政党「五つ星運動」にも痛手となりそうだ。

 市幹部は市営ゴミ処理会社の顧問を長年勤め、市のゴミ問題改善を公約したラッジ氏が起用。その後、伊メディアは市幹部が顧問時代に同社の不正に関与した疑いで4月以降、捜査対象になっていると伝えた。

 ラッジ氏は捜査情報を知らなかったと説明していたが、6日、7月には把握していたと主張を一転。捜査結果が出るまでは問題を公表する必要はないと判断していたとも釈明した。

 ラッジ氏は新鮮なイメージで、汚職など市政への市民の不満を吸い上げ、当選した。だが、就任後は財政担当を含む他の市幹部ら5人が辞任するなど混迷が続く。レンツィ首相は「これほど嘘が相次ぐのは見たことがない」と批判。メディアも「革命の失敗」(伊紙メッサジェロ)と伝え、ラッジ氏の任命責任を問う声が強まっている。

いろいろ批判があっても、まだ市長任期は始まったばかりですので、なんとか巻き返していただくよう願っています。