読売新聞 緊急論点スペシャル パリ銃撃テロ より

読売新聞 2015年1月12日朝刊
緊急論点スペシャル パリ銃撃テロ より
 
「真の問題はフランスが文化的道義的危機に陥っていることだ。誰も何も信じていない。人々は孤立している。社会に絶望する移民の若者がイスラムに回帰するのは、何かにすがろうとする試みだ」
「私も言論の自由が民主主義の柱と考える。だが、ムハンマドやイエスを愚弄し続ける「シャルリー・エブド」のあり方は、不信の時代では、有効でないと思う。移民の若者がかろうじて手にしたささやかなものに唾を吐きかけるような行為だ」
「ところがフランスは今、誰もが「私はシャルリーだ」と名乗り、犠牲者たちと共にある」
「私は感情に流されて、理性を失いたくない。今、フランスで発言すれば、「テロリストにくみする」と受け止められ、袋叩きに遭うだろう。だからフランスでは取材に応じていない。独りぼっちの気分だ」
 
以上 仏歴史人類学者 エマニュエル・トッド氏へのインタビューより
 
「今回の一連の事件の影響で懸念すべきは、左翼ポピュリズムと右翼ポピュリズムが反ムスリムで合体することだ。排外主義が強まると左右両極が一緒になることがドレフェス事件など過去に例がある。可能性がないわけではない」
 
以上明治大学教授 鹿島茂氏 より
 
「問題なのはイスラム預言者や信仰を低劣な絵でけなすということだけではない。それを毎年、キャンペーンのように続けていることだ。そのしつこさに対し、イスラム教徒は自分たち全体が侮辱され、差別されているという意識を強めているのだと思う」
「忘れてはならないのは、表現の自由が大切だと考えるのはイスラム社会の人々も変わらない点だ。「アラブの春」も表現の自由を求める戦いでもあった」
「アラブ・イスラム世界も「テロはけしからん」という点では立場は変わらない。欧米諸国は彼らを「イスラム国」の側に追いやることだけは避けなければならない。そうなるともう手がつけられなくなるからだ」
 
以上 千葉大教授 酒井啓子氏 より