ヨーロッパ覇権以前(上) 序論 第1章

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ヨーロッパ覇権以前(上) 表紙
ヨーロッパ覇権以前(上)
もうひとつの世界システム
ジャネット・L.アブー=ルゴド 著
佐藤次高・斯波義信・高山博・三浦徹 訳
岩波書店 発行
2001年11月27日 第1刷発行
 
原題はBefore European Hegemony :The World System A.D.1250-1350です。
 
序論 第1章 システム生成への問い
13世紀のヨーロッパは東洋の後塵を拝していたが、16世紀までには、すでにかなり追い越していた。
・両地域を結ぶ内陸交易ルート上にある諸地域は、13世紀前半にチンギス・ハーンによって統一され、有効な部分をなしていたが、世紀末までには後継者によって分断されてしまった。
・1348年から1351年まで「悲惨な」世紀半ばに中国からヨーロッパに至る全地域に流行した黒死病は、世界交通の海上ルート沿いにあるほとんどの都市を殺戮し尽くした。
 
13世紀後半から14世紀初頭の世界システムをあるがままにみなければならないが・・・
・当時の諸文化は、何を記録するに値するか考えたか、どこに保存されていたのか、またどの程度の細部がどの程度の正確さをもって記録されたのか、などの点で大きく異なっていた。
・データが手元にあるときでも、叙述史料と、現実世界とのギャップの見通しの問題
 
13世紀、
ジェノヴァや中国では、記録し数え上げることが熱心に行われた。
一方、13世紀の交易に参加した三つの主要な民族と地域―中央アジアのモンゴル、マラッカ海峡沿いの小国、はるかに良好な状況のイスラム地域、では控えめな一次史料や、碑文、世俗に無関心な史料しか残っていなかった。
 
13世紀までに、ヨーロッパでは三つの結節点が一つの交易回路を形成しつつあった。
・トロワとプロヴァン、バール・シュル・オーブとラニィからなるシャンパーニュ大市
・フランドルの商業・金融上の中心ブルージュと第一の工業都市ヘント
イタリア半島の両側にある国際交易港、西のジェノヴァと東のヴェネツィア
 
中央の三つの橋頭堡
黒海沿岸にあり、コンスタンティノープルと中国を結ぶ第三のサブシステムが始まる地点
パレスティナの海岸地域にあり十字軍を通して、第四のサブシステムと接触した
・エジプトの北アフリカに第三の橋頭堡を築こうとしたが、十字軍の失敗ののち、エジプトの支配者によって統制された制限付きの交易関係