シスレーの跡を訪ねて②モレ・シュル・ロワン その2

何と、シスレーの絵のモチーフになった橋の上を、ラクダが渡っているのだ。
まったく意外な風景だった。
もちろん、ラクダと一緒に、人間も歩いている。ただ服装が少し変だ。
慌てて、橋の方に向かう。
橋のたもとで、ユニークなパレードの内容を間近で観察する。
ラクダと共に、デキシージャズ風の服装で、山高帽をかぶった楽団、茶色というかラクダ色のマントをまとった中世の巡礼風の身なりをした集団、ノースリーブの踊り子風の女性などが歩いていたのだ。
橋を渡りきったところでUターンしたので、そのままついていった。途中、ラクダが巨大なフンを落としていくので、踏まないように注意していきながら、楽しいパレードと共に歩いていく。
パレードが、一旦ばらけた後、再びシスレーの跡を訪ねる。
人が入れないようなDONJON(搭、とりで)のそばにあるシスレーの家の前に行く。
中には入れないが、フランス語の表示で
アルフレッド・シスレー 印象派の画家 この家に住み、1899年1月29日、ここで死す
と書いてあった。
更に近くにある聖堂を訪ねる。シスレーはこの聖堂を、同じ角度から、14点描いている。時間をかえて、いろいろな表情を描いているのだ。モネのルーアン大聖堂の連作を意識してたのは間違いない。
モチーフ自体、ルーアンの大聖堂ほどの圧倒的なものではない。ルーアンに行ったとき、大聖堂正面の狭い広場で、迫力に押しつぶされそうになったものだ。
しかしその分日常に近く、いかにも控えめで慎ましいシスレーにふさわしい気がする。
少しおなかがすいたので、パンとジュースを買い、ロワン川の聖堂側の川岸で食べる。
ここには並木もあり、のんびりするにはもってこいのところだった。ただし、シスレーはこちらからの絵は残していないようだ。
少し川下に歩くと、サーカスのテント小屋があった。先ほどのラクダも、ここから連れてきていたのだ。
再び橋に戻り、その真ん中にある水車小屋に降りていく。水が激しく流れている。
また近くの堤防には、昔の大水が出た時の記録が残っていた。
川岸を離れ街中に戻る。絵葉書などを買った後、観光案内所に戻る。例のシスレーの小冊子を、無事手に入れることが出来た。自分にとっては貴重な資料だ。
その外では、BELLE EPOQUEの表示のもと、ノースリーブ、スカートのお姉さんたちチャールストンダンス?を踊っている。女子高生くらいから、フランス風人妻まで年齢もさまざまだ。すこしぎこちなく思えるがそれはそれでよいものだった。
楽しく探索できたモレ・シュル・ロワンを離れる。夕焼けの中、ふくよかな女神の彫刻と共にあるシスレーの胸像が見送ってくれた。