「新デザイン」か「忠実復元」か  ノートルダム大聖堂修復で論争

「新デザイン」か「忠実復元」か  ノートルダム大聖堂修復で論争

産経新聞 4/19(金) 17:50配信

  【パリ=三井美奈】火災で損壊したフランスのノートルダム大聖堂の再建をめぐり、元通りの姿に復元すべきか、新デザインにすべきかで、国内論争が起きている。

 政府は17日、尖塔(せんとう)の再建について、世界中の建築家に呼びかけて国際コンペを行うと発表した。マクロン大統領はこれに先立ち、5年以内の再建を目指す方針を掲げ、「より美しい姿にしよう」と呼びかけ、デザイン変更に前向きな姿勢を示した。

 これに対し、保守系の最大野党「共和党」のボキエ党首は「元通りの姿にすべきだ」との考えを表明。同党幹部は「大統領は謙虚になるべきだ」と注文付け、「国民の声を問う」としてインターネットの意見募集を開始した。極右「国民連合」のルペン党首も、新デザインの導入に反対した。

 文化財の建築家の間でも意見が分かれる。「耐久性を優先し、木造の骨組みや鉛製の屋根は、現代の軽い金属に替えるべきだ」との声に対し、「歴史的建築物は忠実に再現すべきだ」との反論が出た。

 大聖堂は14世紀に完成。尖塔は倒壊の危険から18世紀に撤去された。19世紀、文豪ユゴーの呼びかけで大聖堂が全面修復された際、建築家ビオレ・ル・デュクが、かつての尖塔に新デザインを加えて復元した。
 

早速、修復について議論が沸き起こっています。
個人的には以前のままで残すべきだと思いますが、マクロン大統領は、どうも新しいデザインを取り入れたがっているような感じです。
このような議論は、ルーブル美術館のピラミッドや新凱旋門、更にさかのぼればエッフェル塔にまで及んでいました。
フランス人は歴史的建造物についても、実に議論が好きな人々だと思います。
どう転ぶかが気になるところです。
あとこの記事に尖塔の復元について書かれていますが、ユゴーノートル=ダム・ド・パリの第3編 1 ノートル=ダムの中で
「本堂と外陣との交点の上に立っていたあの美しい小さな鐘楼、隣のサント=シャペル礼拝堂の尖塔(これもまたこわされてしまったが)に劣らず弱々しく、それでいてのびのびとし、すらりとした、鋭い、鐘の音のよく響く、透かし造りの姿を二つの塔よりも高く空に突き出していた、あの鐘楼はどうなってしまったのだろう?ある趣味のよい建築家があっさりちょん切ってしまって(1787年のことだ)、その傷跡にまるで鍋のふたみたいな大きな鉛の膏薬をべったりはりつけ、さて、これで傷口は隠せたと安心してしまったのだ」
と尖塔がなくなってしまったことを嘆いています。
続いて、破壊の跡には三つの原因があると書いており、第1は時、第2は政治上や宗教上の革命、そして第3はますますグロテスクに、おろかになった「流行」と書いています。
今回、もし国際コンペを行うにしても、単なる流行ではない基準で選んでほしいなと思ってしまいます。