ラファエッロ「聖チェチリアの法悦」(「イタリア紀行」及び「天使とは何か」より)

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この絵画は、ラファエッロによる、「聖チェチリアの法悦」(1514年)です。
ゲーテは1786年10月18日、ボローニャにて鑑賞しています。
「イタリア紀行」の中でゲーテ
「われわれに何の関わりもない5人の聖者が相並んでいるが、その存在がいかにも完全であるために、たといわれわれ自身は滅び去ってもいいから、この画のためには永遠の存続を願いたいくらいだ」
と激賞しています。
真ん中の人物が聖チェチリアなのですが、手持ちオルガンは両手から滑り落ちそうで、更に足下には現世の楽器が無造作に転がっています。
そして彼女の法悦の視線は天の光であふれる雲間で合唱にいそしむ天使たちに投げかけられています。
つまり天使の詠じる「宇宙の音楽」にして神の音色に心の耳を傾けている様子を描いているわけです。
彼女を囲むのは左から聖ペテロと福音書記者聖ヨハネ、そして聖アウグスティヌスと聖マグダラのマリアです。
ペテロは瞑想し、真ん中の二人は互いに視線を交わし、マグダラのマリアは鑑賞者を画面の中に誘うように視線を外に投げかけています。
天上の天使は6人いて、左の4人と右の2人がそれぞれ別の本(楽譜?)を見ています。
二つのグループがそれぞれ別の歌を詠じるということはありえないでしょうから、別の声部が意図されているように考えられます。
この絵画において、「楽器の音楽」の放棄と、天の調べへの観想と法悦というテーマは明確に打ち出されています。
そこには美の観想により神のイデアに近づくという新プラトン主義的な理念も反映されています。
(画像はイタリア語版wikiからです)