天国の子猫 チョコのある一日

いつもは静かな天国ですが、その日は違っていました。
あまりに多くの人が、突然天国に来たので、子猫のチョコはびっくりしました。
普段のんびりしている天国の偉い方々も、受付や案内に大わらわです。
チョコは雲の隙間から地上の状況を覗き込みます。
大震災によるあまりの惨状に、自然と大粒の涙があふれてきます。
ぶるるん、とチョコは大きく首を振り、涙を振り切りました。
「ボクが泣いてちゃだめなのにゃ。ボクはみんなを励まさないといけないのにゃ」
天国よいとこ、といえども、突然来た人々にとってはいろいろ心配なことも多いのです。
子猫のチョコは、そんな人たちを励まそうと、一生懸命走りまわるのでした・・・。
 
天国の慌ただしい一日も終わろうとしています。
チョコは大好きなお昼寝もせずにみんなを励ましていたので、すっかり疲れてしまいました。
ちょうど目の前に柔らかそうなソファのようなものがあったので、そこに倒れ込みます。
「こんにゃ時に、寝ちゃってごめんにゃさい・・・」とつぶやきながら深い眠りに入っていきます。
しばらくして、「やっぱり天国では、子猫もいっそう可愛いねえ」と声がします。
そう、そのソファのようなものは、この日に天国に来た、おばあさんの膝枕だったのです。
チョコのすやすや眠る可愛い寝顔を見て、おばあさんは思わずにこっとして、チョコの疲れた体をなでながら囁くのでした。
周りの人たちも「可愛い!」「ホント癒されるねえ」といいながら、チョコの安らかな寝顔に見入るのでした・・・。