ベジタリアンスマイリーの大騒動③

「スマイリー!」
Fちゃんは大きな声で、横たわっているスマイリーに向かって呼びかけました。
中に入るな、という所員の警告も忘れ、Fちゃん夫婦もハッピー、フィーフィーも慌ててスマイリーのそばに近づきます。
一生懸命、人間たちはスマイリーの体をゆすり、動物たちはペロペロとスマイリーの顔を舐めます。
すると、「ふにゃ?」とスマイリーの目が開きました。
「あっ、よかったよかった、生きてるのね」
Fちゃんはほっとして、涙目でスマイリーを見つめます。
ハッピーがネコ語で「お兄ちゃん、大丈夫?」と問いかけます。
それに対しスマイリーは「みんなどうしたの。ボクは新鮮な野菜を食べておなか一杯になって、よく冷房のきいたところだったので、気持ちよく寝ていただけだったのにゃ」と呑気に答えます。
「もう、お兄ちゃん相変わらずなんだから」とハッピーはほっとして言います。
そんな和らいだ雰囲気もつかの間、保健所の所員がスマイリーにつかつかと近づいてきました。
今にも捕まえようとする、恐ろしい様子です。
その所員の怖い表情に、スマイリーは一気に目が覚めてしまいました。
所員にすれば、食品サンプルを食べられた怒りとともに、スマイリーを捕まえ検査しなければならないとする職業的使命感だったのです。
しかしスマイリーにすれば、盗み食いがばれて、きつくお仕置きされるのかと誤解してしまいました。
呑気な割には臆病な子猫なので、慌ててその部屋から逃げ出します。
そんなスマイリーを、みんなが追っかけます。
更に保健所からも出て、ブリュッセルの街中を駆け抜けます。
小便小僧の前を通り、ギャルリーを通り、ついにはグランプラスにまで逃げてきました。
そこはなぜか、いつもより更に、ごった返していました。
とりあえず逃げ切らねばと、周りの建物を見渡します。
とすると、鐘楼のそびえる建物が目に入ってきました。
「あの上なら誰も追って来れないのニャー」
スマイリーはその建物に入り、階段を上っていきます・・・。