ベルギーにゃんこのB-1グルメ③

スマイリーは恐る恐る一口食べます。
と、その瞬間、ニコーと満足げな笑顔を浮かべました。
そしてガツガツと焼きそばにかぶりつきました。
途中、のどに詰めんばかりの勢いです。
満足そうにスマイリーを眺めている老人に向かって、飼い主のおばあさんが話しかけようとしますが、何語で喋っていいかわからず、「あのー」と口ごもりました。
そんなおばあさんに対し、老人は流暢なフランス語で話しかけます。
「このネコはあなたが飼っているのですが」
おばあさんは驚き「はい、そうですが・・・。お上手なフランス語ですね」と答えます。
老人は続けます。
「いや、私は若い頃パリで料理の修業をしていまして、日本の東京でフランス料理店を経営し、老後は田舎に帰ってたんです。そこで若い連中に町おこしを手伝ってくれっていわれて今に至るわけです。まあわしは普通の焼きそばに欧州流の味付けをしているんで、日本人にとっては新鮮、そして欧州人の口にも合うわけで。どうやら欧州ネコの口にもあったようですな。まあ料理に心がこもっていないと話にならないが。それにしてもいい食いっぷりですな。このネコのお名前は?」
おばあさんは
「スマイリーといいます。本当に食べることが好きな子で」と笑いながら答えました。
と喋っている間にも、スマイリーの食いっぷりにつられて、いつの間にか長い行列が出来ていました。
「どうやらわしももう一頑張りせにゃいかん。これもスマイリーくんのおかげじゃな」
と言って、おじいさんは屋台に戻っていきました。
結局、これで焼きそばに馴染みのなかったブリュッセルの人たちも殺到し、大会本部から特別賞をもらうことができました。
これも結局は、みんなのやる気に火をつけたスマイリーのおかげです。
本当におめでたいにゃんこです。
 
それから一ヵ月後、おばあさんは何気なくこの焼きそばを作った街のHPにアクセスしました。
画像の中に焼きそばとともに、なんだかスマイリーそっくりの顔、白くて鼻の周りだけ黒いデブ猫、の巨大なぬいぐるみを見つけました。いわゆる「ゆるキャラ」というものです。
動画を開くと、そのゆるキャラが街の人たちと一緒に踊っています。
「~おいしい焼きそばいっぱい食べて、スマイルスマイルスマイリー~」
コテを両手に持って、みんなで楽しく歌い踊っています。
これを見ておばあさんは大喜び。スマイリーを呼んできて「ほらほらスマイリー、あなたが映っているわよ」とはしゃぎます。
それを見たスマイリー、ちょっとご機嫌ななめのようです。
「ふにー、ボクはもっとオトコマエでダンディなのにゃー」と
(完)