ローマ人の物語Ⅸ(アントニヌス・ピウス帝)

ハドリアヌス死後、「慈悲深い」アントニヌス・ピヌスが皇帝の座につく。
この時代は「秩序の支配する平穏」と呼ばれる時代だった。
また、特にゴシップもなく、醜聞好きな人類にとっての興味も少ない。
といっても、同時代を共有した人々にとっては、それが幸福だっただろう。
ネロやカリグラはもちろんの事、カエサルの時代などでも、後の世の話としては面白いが、戦場に住んでいた人々にとっては、苦しみの時代だったに違いない。

ハドリアヌスが帝国のあちこちを視察巡行したのに比べて、アントニヌス・ピヌスはローマに居続ける。
当時の情報伝達の優秀さ。
防衛はそのまま引き継いで十分だった。
せいぜいブリタニアのアントニヌス防壁くらい。
公共建築も、前の皇帝が建てまくったおかげで特に多くない。
ハドリアヌス霊廟(のちのサンタンジェロ)とその前の橋アエリウス橋が代表的。

ローマ帝国は一つの大きな家であり、帝国内に住む人はこの大家族の一員と言う考えで統治するアントニヌス。
「国家の父」の称号がふさわしい皇帝。