さよならマルセイユ

翌日、朝すぐにマルセイユを発たなければならない。
フロントに集まり、運ぶ荷物をみんなで分ける。
自分のチェックインをあわただしく済ませるが、明細の十分な確認をしていなかった。
あとで連れの人に注意される。
確かにこういうことが積み重なると、日本人はカモだと見られてしまうかもしれない。
かさばる荷物を持ち、ホテルを出る。
地下鉄でマルセイユ駅まで行く。出発の時間が迫っており、少し焦る。
感傷に浸る余裕もなかった。
無事TGVに乗り、ひたすら北、はるかなパリを目指す。
できればエクス・アン・プロヴァンスなどに立ち寄ってみたかったが、荷物があり、他の人に迷惑をかけるので、そんな事は言えなかった。
マルセイユからしばらくは山がちだったが、北に行くにつれてのんびりした、穏やかな、フランスらしい平原が広がってくる。
大地がなだらかな曲線を描き、緑の麦畑あり、黄色い菜の花畑があり、牧草地では牛や馬がのんびりと草をついばんだりしている。
このような情景を思い出すたび、たまらなくフランスが恋しくなる。

パリ・リヨン駅に着く。
ここで今回のメインの担当の人が、トラン・ブルーというレストランに寄ろうよ、と提案する。
そのお方にとっては、今回は本当にしんどい用件だった。準備からマルセイユに入り、最後の方は風邪気味だったのだ。
やってらんねーよという気持ちだったかもしれない。
自分のように、下働きの立場よりも、何十倍もの苦労である。
その打ち上げの気持ちをこめてのランチである。
プラットフォーム正面の、緑のおしゃれな階段を上り、トラン・ブルーに入る。