『「笛吹き男」の正体』に関するメモ

『「笛吹き男」の正体』について、少し疑問に思った所がありましたので、一応メモを書き残しておきます。

筆者の説によると、東方植民の集団に子供がついていったとのことで、祭りの最中だったので親は気付かなかった、気付いたのは相当時間がたってから、とありますが、気付かなかったのは、せいぜい1日分位のように思われます。それならまだ集団はハーメルン近郊にいるわけで、市長の娘も行方不明ということもあり、街中総出で、馬なども使って、探すことができると思うので、充分間に合うタイミングだったように思えてなりません。またロカトール(植民請負人)もいろんな人たちに声をかけており、結局行かなかった人たちもどこに行くか位は知っているはずで、集団捜索の手がかりは充分あったように思えます。

阿部謹也さんの本では、確かに本丸までは迫っていないにしろ、一番有力な説としてヴォエラー女史による「遭難説」が書かれていました。ヨハネ祭の興奮、それこそ舞踏病のようなもので子供たちが危険な場所までプロセッション(行列)や踊りでトランス状態になり、湿地帯の窪地で遭難したというのが、悲劇性からみても妥当のように思えます。実際舞踏病で川で溺れ死んだという例もあるそうです。『「笛吹き男」の正体』では、なぜかこの説に触れていなかったのが残念でした。