子子家庭は波乱万丈 ドイツ、オーストリア旅物語 赤川次郎 著

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子子家庭は波乱万丈
ドイツ、オーストリア旅物語
新潮社 発行
2007年12月20日 発行
 
この本は「子子家庭、ヨーロッパに行く」という小説と、「エッセイで100倍楽しむヨーロッパ」というエッセイの二部構成になっています。それぞれ対応する部分のページが書いているので、小説からポンと関連するエッセイの方、またその逆に行ける様になっています。
小説の方は子供二人での旅行中にわけありの大人が絡んで、という感じです。子供二人で旅行なんて危ないと思うのですが、その理由は最後まで読めばわかります。
 
今ヨーロッパのオペラハウスはどこも演出家主導の公演が多く、抽象化されたセット、超モダンな演出で当惑させられることが多い。
どうみても「経費の節約」が第一としか思えないものだ。
評論家が解説してくれなければ、その意図が伝わらない演出を「すぐれた演出」なのだろうか。
(そういえば、パリのオペラ・バスティーユでみたオペラも、妙に現代的で残念だった思い出がある)
 
 
西洋中世史の阿部謹也さん、を敬愛する赤川さん。
著書「ハーメルンの笛吹き男」における、中世ヨーロッパの王侯貴族や支配層とは無縁の庶民の姿と生活が活き活きと描き出されていることに衝撃を受け、興奮した。
学問の世界において、阿部さんは異端であったかもしれない。
氏がヨーロッパに関心を持ったきっかけは、子供の頃カトリック修道院の施設で暮らしたという経験から来ている。
阿部さんはそこで、聖職者や修道女の表向きとは別の生々しい感情や個性に触れて、キリスト教についても懐疑的な目を養ったようである。
ヨーロッパの文化がキリスト教そのものというより、キリスト教が本来のヨーロッパの文化を変えてしまった、という意味のことを言われた阿部さん。
「きれいごと」の歴史よりも、むしろどの時代にあっても存在した「差別された人々」に強く関心を寄せた。