柳田国男と短歌 続 森のふくろう

柳田国男と短歌 続 森のふくろう 表紙

 

柳田国男と短歌
来嶋靖生 著
河出書房新社 発行
平成六年四月五日 初版発行

序章 柳田国男の短歌
おきなさび飛ばず鳴かざるをちかたの森のふくろふ笑ふらむかも
この歌は『遠野物語』序文の末尾に記されている柳田国男の短歌である。歌は、その歌意を超えて、柳田国男の仕事の全容を暗示する香気がある。
歌意。「(遠野の口碑をこのようにして私はまとめたが)時代を超えて生きる翁のように、飛びもせず鳴きもせず、遠く奥深いところから自然や人間の営みを見守っている森のふくろうは、(こんな『遠野物語』など、何をつまらぬことをと)笑うであろうか」p8

 

柳田国男の歌の四つの時期
・幼年期の歌
 国男は十歳に満たぬうちから歌を詠んでいた。
・東上後、明治二十二年から二十七年までの歌
 桂園派の歌人松浦辰男に歌を学ぶ。
・第一高等学校入学から結婚まで
 短歌よりもむしろ新体詩に熱中する。
・詩人であり歌人であることをおりた国男の歌



Ⅰ 新資料発見に見る短歌
レクラム文庫書込みの歌p36~
レクラム文庫の扉や見返しに柳田自作の歌が書き込まれている。
レクラム文庫は1867年ライプチヒで創刊された名高い文庫
日本には明治十年代から輸入

Ⅱ 観賞・柳田国男の歌
柳田国男の歌で最も多いのは旅の歌
またこれほど多くの旅をした人も珍しい
柳田は旅に三つの段階を考えている。
・旅が憂いものつらいものであった時代
 『万葉集』の防人の歌、など
交通機関の発達によって旅が愉しいものとなり、人の心をゆたかにする時代
・旅の喜びをもたらすものが一つ一つなくなって行く時代
 何何ツアーによる旅の商品化、無定見な観光行政、団体旅行におけるモラルの荒廃などの現在を予見していた?

 

Ⅲ 柳田国男の近代短歌批判

Ⅳ 柳田国男と現代短歌
『名文』の中村明
国木田独歩から宮本輝まで五十人の文章が取り上げられているが、その中で文学畑以外の人は柳田国男ただ一人。
『文体の発見』の粟津則雄
この本では露伴宣長柳田国男、子規、漱石志賀直哉岡本かの子梶井基次郎中島敦保田与重郎
柳田国男を読む』の千葉徳爾
柳田の随筆の文章の描写や語彙などの範囲をこえて、柳田の思考法や頭脳の構造にまで触れ、学問そのものの性格に迫っている。

Ⅴ 柳田国男全短歌(試稿)