【12月29日 時事通信社】国際的な地球温暖化対策の枠組みを定めた「パリ協定」合意の舞台となったパリが、深刻な大気汚染に頭を痛めている。放置すれば、2024年五輪や25年国際博覧会の誘致にも影響しかねないことから、電気自動車(EV)の普及や水上タクシーの活用など対策に躍起だ。
 「座って本を読めないのは残念だが、環境のためなら仕方がない」。自動車の交通規制を受けて電車の利用客が急増した12月上旬、会社員の男性は地元メディアにこうぼやいた。
 パリでは12月初旬から中旬にかけて微小粒子状物質PM10の大気中濃度が急上昇。世界保健機関(WHO)の基準を大幅に上回った。ディーゼル車などの排ガスが主因とされており、市は計6日間にわたり、ナンバープレートにより車の利用を制限する交通規制を実施。この間は地下鉄などの公共交通機関を無料にした。
 PM10の大気中濃度は12月下旬には落ち着いたものの、フランスでは依然として古いディーゼル車が多く、抜本的な対策が必要だ。
 仏政府は排ガスを出さない電気自動車(EV)の購入者に最大1万ユーロ(約122万円)の助成金を出して買い替えを促進。パリ市も今年、60カ所にEVの充電スタンドを設置し、利用者支援に努める。
 市は環境対策の目玉として、中心部を流れるセーヌ川で電動水上タクシー「シーバブル」の試験運用を来春にも開始。新たなパリの足として定着させたい考えだ。イダルゴ市長は「排ガスを出さない未来の交通手段をパリで最初に試したい」と意気込む。(c)時事通信社