通貨の日本史 第一章 銭の登場

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通貨の日本史
高木久史 著
2016年8月25日 発行

金・銀・銅などの金属が通貨の素材になぜ選ばれてきたか
①耐久性
②加工性
③実用性が無い
④ほどほどに希少

日本初の金属通貨というと708年発行の和同開珎、というイメージがあるが、近年、それより早く金属通貨が存在したことが確認された。
それは無文銀銭という銀貨である。
円形で中心に穴がある。○や×などの刻印が入ったものもあるが、無文のものが多いため慣習的にそう呼ばれた。
遅くとも660年代ごろ、天智天皇の治世には存在した。

1270~80年代、中国銭の第三の波が来た。
元が紙幣専用政策を採ったのは、基軸通貨に採用した銀が不足したためである。
銀を基軸通貨にした背景には、モンゴル帝国が成立して東西交易が活性化し、西のヨーロッパから東の中国までユーラシア全体で、国際決済通貨に銀貨を使うようになったためである。

建武新政下の1334年、後醍醐天皇は乾坤通宝(銅銭)と政府紙幣の発行を布告した。
発行の目的は、天皇の権威を示すための政治的デモンストレーションの面と、大内裏建設のための財政的側面とがある。
相変わらず社会への通貨供給は第一目的ではない。
この計画は未遂に終わった。

室町幕府は銭を発行しなかった。
技術も素材もあったが、幕府にその必要がなかったからである。
国防費の調達が銭を発行する目的だった中国・朝鮮・ベトナムとは異なり、日本は島国でもあり、国防費が大きくなかった。
また地方支配を配下の武士に任せているため、幕府そのものの財政も小規模ですんだ。