旅行が楽しくなる 日本遺産巡礼 西日本30選

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旅行が楽しくなる
日本遺産巡礼 西日本30選
磯達雄 文 
宮沢洋 イラスト
日経アーキテクチュア 編者
日経BP社 発行
2014年12月8日 初版第1刷発行

日本の歴史遺産30件を実際に訪問しリポートしています。この本は西日本版ですが、東日本版もあります。
過去の建造物を、現代の建築および海外の建築と比較しながら伝えている面が特に興味深いです。

龍安寺の庭が表す海は、島がぽつりぽつりと浮かぶ多島海である。その代表はヨーロッパではエーゲ海であり、日本では瀬戸内海だ。
東西のモダニズム建築の大家たち。ル・コルビジェ24歳のときギリシャを旅する。また丹下健三は幼いころは今治旧制高校時代は広島で過ごす。
モダニズムのシンプルな美学は、龍安寺の石庭とも共通する要素である。
 
法隆寺五重塔と金堂は対を成す「非対称コンビ」建築だった。
非対称と言っても、バランスが悪いわけではない。むしろお互いの欠けている部分を補うことで、ピン芸には太刀打ちできない魅力を生み出している。
(この解説を読んで、フィレンツェのジョットの塔とドゥオーモのファサードを思い出した)

東大寺大仏殿のような無柱空間。幅と奥行きが23m、高さが28m。
ローマのパンテオンは直径が43m、天井までの高さも43m
しかし大仏殿は大仏が鎮座している。人物の大仏から見るとこの内部は極小の内部であるとも言える。

主祭殿のほかに高床式の住居や倉庫などがあり、それを二重の環濠と二重の木柵が囲んでいる。
面白いのは物見櫓で、環濠から突き出すような形で建っている。まるで中世ヨーロッパの城塞都市を思い起こさせるようなデザインだ。

日本に戻った漱石が著したのは「小説」
天下国家を論じる「大説」に対して、小説は風俗、流行、市井の小事件を扱うもの
銀行、駅、公会堂といった「大説」としての建築に対し
道後温泉旅館は「小説」としての建築
それは雑多な造形の集積による楽しさで満ちている。それが悩める近代人である漱石をも、癒したのだ。