古代末期のローマ帝国 多文化の織りなす世界

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古代末期のローマ帝国 多文化の織りなす世界
ジリアン・クラーク 著
足立弘明 訳
2015年2月25日 発行

古代末期は、
ローマの没落と存続の双方を経験した時代である。
中世ヨーロッパがポスト・ローマ期の「蛮族」諸王国から形成され、
他方ではビザンツが大規模な領土喪失に耐えて新しい敵や同盟者に適応していく時代
キリスト教イスラームという二つの新しい宗教が台頭し、ローマの支配下の領域に衝撃を与えた時代
この50年間の研究で、古代末期は3世紀から8世紀までを含み
非ローマ的な諸文化に対するローマ的な視点に疑問をなげかけ
異教に対するキリスト教の勝利とか
ローマ帝国の栄光時代から暗黒の時代に没落していった「大きな物語
を受け入れることを拒否するようにもなってきた。

過去の諸社会の何を評価するか、人間の生存において何を最も重要で興味深いものとするかは歴史家によって様々である
食料と安全という基本的なニーズか
政治社会組織なのか
軍事や技術面の発達なのか
人間性と神々についての信念なのか
文化と創造性なのか

文化破壊者という語源にもなった「ヴァンダル」
しかしヴァンダル人は自らが征服した豊かな地域のローマの贅沢な生活が気に入っていた
最後のヴァンダル王ゲリメルは降伏を提案されたとき、むしろ竪琴を望んだ。それで自らの不運を歌う自作の頌歌を演奏したがった。そして鎖につながれて、凱旋式で歩くときには旧約聖書の一節を繰り返していた。

ギボンは宗教、特にキリスト教はローマ没落の主要原因であると考えた。
しかしギボンも他の歴史家も、主要文献がキリスト教徒の著作が中心となったためか、宗教の重要性を過大評価したのかもしれない。

二十世紀後半には、以前の植民地が独立を達成するにつれ、ポスト・コロニアル的歴史がヨーロッパの植民地主義諸国の視点を疑問視し始めた。
しかし古代末期を研究する歴史家は、蛮族に対するローマ人の記述に疑問を持ち始めたとき、古代史においてしばしば起こる問題に直面した。それは現代史におけるような他者の視点を我々がもてないことだった。