白猫スマイリーの奇跡の猫背②

スマイリーはその晩、ホテルの部屋で意識を取り戻しました。
みんながスマイリーの背中を覗き込み、不思議がっています。
「これってどう見ても聖母マリアさまだよな・・・」とFちゃんの旦那さんがつぶやきます。
そうなんです。スマイリーの真っ白だった丸っこい背中に、カラーでマリア様らしきお姿が浮かび上がっているのです。あたかもライトで照らされ焼き付けられたかのごとく・・・。
大聖堂のファサードの壁によじ登ったとき、強い光に照らされて、変色してしまったのでしょうか?
それでも、こんなにくっきりと写るわけもないので、奇跡としか言いようがありません。
 
スマイリーのことは、たちまち話題になりました。
ホテルでも、帰りのTGVでも、知らない人たちがスマイリーの背中を覗き込みます。
ブリュッセルのおうちに帰ったときには、すでにうわさが広がっており、テレビ局や新聞社までが来て、スマイリーの背中を撮っていきます。
更には教会の人や熱心な信者まで来て、ありがたやありがたやとばかりにしげしげと背中を見つめ、お祈りしていきます。
スマイリーも注目を浴びて、まんざら悪い気はしなかったのですが、さらにうれしいことがありました。
やれお供えとかで、おいしそうな食べ物を持ってきてくれるのです。
生クリームいっぱいのケーキとか、骨付きの脂ののったお肉とか・・・。
スマイリーは、Fちゃんの作ってくれるバランスのいい食事には見向きもせず、みんなが持ってきてくれる豪勢な食べ物にむしゃぶりつくのでした。
おかげでスマイリーはもともと小太りだったのが、更にぶくぶく太ってしまいました。
もう大好きなにゃんこトンネルにも入れません。また一生懸命練習した階段のぼりもできなくなってしまいました。
それでも目の前のご馳走には勝てません、相変わらず信者が持ってきてくれる食べ物に嬉しそうにむしゃぶりついています。
 
そんなある晩、スマイリーは満腹して寝ていると、女性の声で「スマイリー、スマイリー」と声をかけてきます。
はっと目を開けると、そこには見たことのある女性の姿が・・・。
(続く)