アーティストたちとの秋①

 この秋、ひょんなことから、クラッシックコンサートの手伝いをすることとなった。
 とはいっても、こちらは「海辺のカフカ」のホシノくんのごとく、クラッシックとはまったく無縁の生活をしていた。
 しかし今回の経験を通して、やはり「ホシノくん」のごとく、クラッシック音楽を勉強してみよう、あるいは楽しんでみよう、という気にさせたのだった。

 コンサートの2週間ほど前、簡単な業務説明会が行われた。
 ぼくの仕事はとりあえず二日間で、演奏家随行と空港までの送迎というものだった。
 いままでいろいろなパターンの空港送迎や、随行などは経験があるが、いわゆるアーティストと呼ばれる人たちと行動を共にするのは初めてだった。
 どのような人種なのかもよくわからない。
 楽しみ半分、不安半分というのが正直な気持ちだった。

 少しでも、クラッシック音楽について勉強しておこうと、図書館に行き、音楽関係の本棚から探す。
 この中から、ひと目表紙やレイアウトが気に入った、ショパンに関する紀行文と、モーツアルトに関する、豊富な絵や写真入りの入門書を借りる。
 パラパラと読みふけりながら、二人の天才の美しくもはかない人生に思いを馳せる。
 幼少のころから神童とうたわれ、その能力を存分に発揮し、波乱万丈の人生を送る。
 ある意味墓場が唯一の安らぎの場所だったかもしれない。
 そんな彼らの残した音は今も立派に残る。そして今後も・・・、ただし人類さえ地球上に残っていれば、の話だが。