生と死の狭間で(アテネ・国立考古学博物館)

古代アゴラを出て国立考古学博物館に行く。
このとき、どこを通り、どうして行ったか全く思い出せない。オモニア広場の情景がかすかに頭の中にあるのみなので、そこまで地下鉄に乗っていたのかもしれない。ガイドブックには、博物館の開館時間が午前中のみ、あるいはクリスマスあたりや年始年末は休館の場合もある、とのことだったので、焦っていたのかもしれない。
博物館に着く。幸いちゃんと開いていた。
まず巨大な男性像を見る。エジプトなどにある像と似通っている。
続いていわゆるギリシャ彫刻らしい像を見る。鍛えられた、自然な男性像である。
こういうのを見ると、自分もトレーニングに頑張らなければならないと思う。腹筋背筋腕立て伏せ、歩いて泳いで自転車に乗りまくろう。またラーメンなんぞ食わずに納豆や鳥のささみだけで、そしてビールなんぞを飲まずContrex(フランスのミネラルウオーター、やせる水と言われている)にしよう!と思うが実行は難しい。
この内、立派なあごひげを生やした男性像があった。アルテミシオンのポセイドンと言うらしい。強いて言えばサッカーチーム、リバプールのシセのような感じだ。以前アテネに行った女性の同僚が写真を撮っており、見せてくれた。その時は、ヒゲ親父が好みなのかと思ったが、単に有名な作品だということにすぎなかった。
他様々な彫像、レリーフ、出土品などを見回る。
この時はあまり気がつかなかったのだが、あとでギリシャの美術の本を読んだ時、墓碑というものに興味を持った。墓碑として、レリーフで亡くなった人物を描いている。これには一人だけでなく、後に残された家族も描いているのがあるのだ。
死者と生きている家族は大体わかる。というのは、家族はいかにも死者をいたんでいるが、死者の視線はあらぬ方向を彷徨っているのだ。その様子を見ると、この世とあの世の間の、越えられない深い悲しみ、というのが伝わってくる。世界中探しても、このような墓碑は、珍しいのではないかと思う。
もう一度この博物館を訪れることができたら、今度はじっくり鑑賞したいと思う。