ヨーロッパの不思議な町

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ヨーロッパの不思議な町
巖谷國士 著
筑摩書房
1990年12月25日 初版第4刷発行

ヨーロッパの東西南北のいろいろな町を、学者らしい深い視点から眺めた旅行記

ビロード革命の1年前、1988年に訪問したプラハの街。社会主義国からや、西側からの観光客の群れだけでなく、水面下での大きな変化を感ずる筆者

イタリアの中心部にいることを感じさせてくれるボローニャ。しかしこの重要な拠点都市の駅は、ガール(終着駅)式ではなく、スタシオン(途中駅)として、列車をそのままの方向へ送り出していく。西欧では珍しいことらしい。ボローニャの「中途」の町の性格

ピサの斜塔、大聖堂、洗礼堂、納骨堂。青い空と緑の芝生の背景。四つの建物が、SFめいた異星からの物体に変貌する。今はもう記憶から失われているその何かが、この広場を、この四つの建物を、宇宙へとぽっかりひらかれた暗号空間に仕立てている。ピサの過去の栄華と、現在の一地方都市という地位を象徴しているのか。

リヨンのまちをゆるやかに身をくねらせて流れるローヌ河とソーヌ河。この河と丘が、このまちに女性的な雰囲気を与えている。

ブリュッセルのビアホールで、ビールを飲みながらピンク色のやわらかなハムの厚切りをかじる。アルテュールランボーが放浪の末にたどり着いたベルギー・ワロン地域の町、シャルルロワの「キャバレ・ヴェール」(緑亭、あるいは居酒屋みどり)と歌われる店の事を思い出す筆者。