ラファエロを絶賛する(ドーニ夫妻の肖像・パラティーナ美術館)

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16世紀初頭のある日のフィレンツェにて、成功した商人アニョロ・ドーニが妻、マッダレーナ・ドーニに相談を持ちかける。

マッダレーナ「あなた、その嬉しそうな顔は何。また新しい芸術作品でも見つけたの?」
アニョロ「いや、常々考えていたことなんだが、一度俺たちをモデルに絵を描いてもらおうかなとおもってな。お前はどう思う?」
マッダレーナ「それはいいわね!私も一度は絵のモデルになりたいと思っていたのよ。ところで、誰に描いてもらうの?」
アニョロ「今話題の、ラファエロさんに描いてもらおうと思っている。」
マッダレーナ「それはいいわね。でも忙しい人だし、お金もかかるんじゃないかしら」
アニョロ「お金の面は問題ないさ。俺はたっぷり金を稼いだしな。そして無駄遣いをせずしっかり貯め込んでいるし。それでも唯一美術品にはお金をかけている。周りの奴らは、俺の事をケチな奴だと陰口を叩きやがるが、あいつらには俺の高尚な趣味がわからないようだ。奴らは今のフィレンツェの芸術を普通に思っているのかもしれないが、今に見ていろ・・・」
マッダレーナ「ラファエロさんなら優しそうだものね。ミケランジェロさんの時みたいには・・・」
アニョロ「ああ、あの時のことを思い出すと頭が痛くなる。俺がちょっと金をけちったばっかりに、ミケランジェロさんの機嫌を損ねてしまい、結局大損してしまった。絵は確かにいい聖家族の絵だったけどな。」
マッダレーナ「ラファエロさんならそんなことはなさそうね。何せ、芸術家らしい気難しい所は無い人だそうだから。」
アニョロ「よし、そうと決まれば話は早い。早速ラファエロさんの工房に頼みに使いを出そう。」

その後話はスムーズにまとまり、モデルをつとめる二人。そしてその絵が彼らの屋敷に運び込まれる。

アニョロ「いやあ、素晴らしいなあ。我ながら惚れ惚れするなあ。ただの商人ではない、俺の知性的な面をちゃんと引き出してくれたな。眉間の皺に知性がやどるってか」
マッダレーナ「私も落ち着いて美しいわ。宝石もよく似合っているし。ラファエロさんが『奥様、もっとリラックスしてくださいませ』て言ってくれたけど、やっぱりどうしても気合が入ってしまったわね。あとでどっと疲れが出たけど。あと強いて言えば、もう少しスマートに描いてくれてたらなあ。」
アニョロ「いやいや、その点はラファエロさんはよく頑張ってくれたよ。(アニョロの肩をはたくマッダレーナ)あいてて・・・」
マッダレーナ「まあ、でも本当に素晴らしい絵ね。背景の自然と空のもと、本当にラファエロさんは人を幸せにする芸術家ね。」
アニョロ「まったくその通りだ。ダンテの詩句を借りると『あの人を見ただけで気分はなごみ、あの人のいるあたりでは 周囲の人さえすばらしく輝く』ていう感じだな。」

幸せな気持ちで、自分たちの絵を見続ける二人なのでした。

(一応多少は美術書も参考にしましたが、結局は自分が、絵から見出した単なる空想ですので、ご了承願います。)