わたしの外国語学習法(前半)

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わたしの外国語学習法 表紙

わたしの外国語学習法
ロンブ・カトー 著
米原万里 訳
1981年9月20日 創樹社より刊行
ちくま学芸文庫より
2000年3月8日 第一刷発行
2020年4月5日 第二十七刷発行

1930年頃から、16ヵ国語を身につけたハンガリー人の著者の体験記です。
学習法という点では、現在とは環境がかなり異なりますので、全てが参考になるかはともかく、かえって更に興味深い内容となっています。
また訳者はかの米原万里さんです。まだ彼女が若くて無名の時に喰っていくために翻訳したとのことです。そして結局この書が米原さんの唯一の翻訳書という点でも貴重です。
結局金にはならなかったものの、内容的にはその後の自分の人生に多大な影響を与えた本になった、と書いていました。

文法とは、体系
全身全霊を打ち込んである言語の文法を身につけた者、文法事項の暗記という難行を通過した者は、体系化され得る知識のあらゆる分野において体系化する能力を身につけたことになる。p18

著者はポーランド語に取りかかる時、自分の実際の能力より高いレベルのコースを選んだ。
何も知らない者こそ、一番努力しなければならない。p27

国語学習者の道程は、ちょうど登山家の場合と同じように、常に上向きで、標高を更新するたびに地平線はますます広がり、美しくなっていく。p37

睡眠学習法は、1916年にはモールス信号で試されていた。
国語学習用の睡眠教材セット18回分で、800~900の語彙単位が習得されることを、さまざまな実験の結果は裏付けている。p69-70
(そういえば昔、よく睡眠学習の広告を見かけたが、どうなってしまったのだろう)

外国語でコミュニケートする時、相手が、我々の外国語の知識を判断する最初の基準は、まず第一に発音。
ちょうど女性における容姿のような役割を演ずる。美人は初めに姿を見せた時は、《常に正しい》。後で色々な欠点がわかってくるかもしれないが。p109

外国語の新たな音声を獲得するということは、まず何よりも新たな顔の表情を習い覚えることで、俳優的とも言える修行。
新しい音声の発音には、顔の、新しい筋肉が参加するから。p114

動詞の変化が複雑すぎるといってフィンランド語に取り組むのを躊躇している向きは、世論の気まぐれで、なぜか《易しい》言語と見なされている英語の場合のように、同じ単語が、いちいち異なる意味を持つようになってしまう、語の組み合わせヴァリエーションの気の遠くなるような複雑さについて考えてみるべき。p133