暮色に映えるエッフェル塔(パリ市立近代美術館)

パリ市立近代美術館を見学する。
現代芸術はマティスくらいしか好みでないのだが、せっかくの機会に見に行く事にした。
この時はたまたまパリ在住の若手芸術家達による発表会を行っていた。
正装した、さまざまな人種の若者たちが集まった写真がある。発表者たちなのだろう。
まず目を惹いたのが、透明なテントを天井からつるし、中に女の子の雑多な小物や家具が置いてある作品だった。
作者は、日本人の女性で、自分と同じ県出身者だった。親しみがわく。
その中にあるテレビでは本人らしき女性が、一生懸命ラジオ体操をしている情景を映し出していた。
ところが第二のところで、もうだめだめという感じで手を振り、止めてしまった。
ここはヤマトナデシコの意地、堂々と最後まで貫き通してほしかった。作者からすると、悲しい関西人の性が出て、オチを模索していたのだろうか。
あちこち見回っているうち、窓の側にきたとき、ふとアラビア音楽が聞こえてくる。少し離れると聞こえなくなった。
あれ、と思ってみると、窓にアラビア風の黒い文様が描かれている。よく見ると、正面数メートル先にある窓にも同じ模様があった。これも作品の一つなのだ。
さらに窓から上を見る。
あっ、と思った。ちょうど夕暮れ時にライトアップされた美しいエッフェル塔が見えるのだ。
やられた。
エッフェル塔まで自分の作品に参加させてやがるのだ。音楽はセンサーにより出るようにしている。
アラブ人とパリの関わりなどという、陳腐な解釈をしてもしょうがない。作者が塔を意識していたのかもよくわからない。
とりあえず、このような形でエッフェル塔を見せてくれたことに感謝したい。