モンナ・リーザ

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モンナ・リーザ
ジュゼッペ・パッランティ 著
原田和夫 訳
一藝社
2005年12月25日 初版発行
 
モナリザの正体については、時にはスキャンダラスに、様々な説が唱えられています。
この本はその中で、古くからの正道の説である、リーザ・ゲラルディーニを中心に書いたものです。もちろん著者自身も彼女と夫フランチェスコ・デル・ジョコンドの辿った人生、レオナルドとの交友があった事実、ヴァザーリの肯定的言辞、当時の他の証言、などの理由から、この説にほぼ同意しています。
著者の特徴といえば、フィレンツェ古文書館に通いつめ、当時の公正証書や課税台帳を丹念に読み解いた資料を基に叙述している、という点にあります。そして出生、転居、家族や召使の人数、職業、土地の売買、税額などなどから当時の生活状況を読み解いていきます。
それにしても、「郊外に屋敷つきの土地を買った」などの無味乾燥な文章からでも、フィレンツェ郊外のブドウ畑や杉、オリーブの木などの美しい情景を思い浮かべてしまいます。
またこの地味な資料から、当時の風習も垣間見ることができます。たとえばリーザの娘などは、以外にも修道院に入っていたようです。当時は上流階級やお金持ちの娘でも、本人の意思とは別に、修道院に入れられることが多かったようです。結婚して持参金を出すよりかは、修道院への寄付金のほうが、お金がかからなくてよかったようです。もちろん修道院内部ではそれなりの待遇が用意されているようですが。
この本はモナリザのモデルの家族について書いているだけでなく、その背景の理解のため、ルネサンス期のフィレンツェの歴史や、当時の芸術家についても簡潔に書かれており、基礎知識を得るのにも役立ちます。
ロレンツォ・イル・マニフィーコについては、文芸保護という点は、16世紀のメディチ家の子孫がフィレンツェの権力を再び掌握したとき、彼の正当性を高めるため、功績をより誇張し美化したものだ、と書いてありました。
ミケランジェロについても書いてありましたが、制作料で稼いだお金で、結構不動産投資を行い、土地を利用してお金を稼いでいたようですね。そういうのとは無縁な人だと思っていたので意外でした。