ローマの街角から(その1)

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ローマの街角から
塩野七生 著
2000年10月30日 発行
新潮社 ラッコブックス

1994年の春から1999年の冬まで書かれたコラム集。アルバニアの難民問題や、日本の混迷する政治などが内容に反映されている。

七人の侍」におけるサムライと百姓の関係を、政治家と国民の姿にたとえて・・・
自民党が長期に政権を握ってこられたのは、総理にするからこの政策を実行して死ね、というシステムが機能していたから。単独講和と吉田茂沖縄返還佐藤栄作国鉄民営化と中曽根康弘、消費税と竹下登、また自民党ではないが、細川護熙と選挙改革、(あと後年の郵政改革と小泉純一郎も)。
一番問題なのは、耳に心地のいいことを並べるだけで何もせず、権力の遂行も民主的でやさしい場合である。このような「民主的な寄生虫」が長生きをして害をもたらしてしまう。

山本七平の本を読んで塩野さんが感じたこと。
日本軍は、古代ローマの軍隊とは全く逆のことをした。
1フィリピンなどの大東亜共栄圏で、現地調達をしたこと。ローマは極力補給するようにした。
2古代のローマ軍は玉砕戦法に無縁だった。最小の犠牲で最大の戦果を得るのが平凡な常識。
3精神力という不確定要素は、他の確定要素の後についてくる。それを日本軍は最初にしてしまった。

修道女マザーテレサの問題提起
1救いの手を差し伸べた貧しい人々に対し、キリスト教への帰依を求めなかった。
2彼女の救いは、実際には完全に不可能な貧困や病気からの脱出よりも、その中での安らかな死の方にあったこと。
3彼女が先頭になって行う慈善に要する費用を集めるために、積極的にマスメディアを利用した冷徹さ

黒澤明さんが亡くなられた時に、イタリアのテレビニュースはすべて伝えていた。またヴェネチア映画祭での、イタリア人の歓迎ぶり。その一方ローマの日本大使館日本文化会館の冷淡ぶり。
今後その死が世界中のテレビで報道されるような日本人を、これからの日本は何人持てるか?
北野武さんなんかはそのような人なんでしょうね。)

(カッコは自分が思ったことです)