『ヴィーナスの誕生』視覚文化への招待

理想の教室
ヴィーナスの誕生
視覚文化への招待
岡田温司 著
2006年4月21日 発行
みすず書房

ボッティチェッリの「ヴィーナスの誕生」及び「プリマヴェーラ(春)」を中心に、当時の作品の背景や内容について解説している。
どちらも、メディッチ家のために、描かれたものであるとのこと。
そしてその祝婚画として、描かれたものではないかというのが著者の主張であった。
絵の中にはメディッチ家、さらにはフィレンツェを賛美するような表現があったのではないかというのであった。
確かに華やかな絵を見てくると、寿ぎの雰囲気が感じられる。

ヴィーナスの誕生」の構成は、ヴェロッキオの「キリスト洗礼」(ダヴィンチが天使を描いたことで有名な)からの影響があるのではないか、という説には、作品の質の違いもあり意外だった。
でも確かに、裸のキリストと、右側の洗礼者ヨハネの手の動き、そして左側の身を寄せ合う二人の天使と、登場人物こそ全く違えども、構図には共通点があるので驚いた。

「春」については、右端の男は春の西風ゼピュロスといい、それがクロリスと言う妖精に絡んでいる。
そしてそのとなりで、すっきりとした面持ちでしゃんと立っている女性が、クロリスが変身したところの女神フローラということであった。
さらに真ん中のヴィーナスを挟んで、三美神が立っている。
左から「快楽」「貞節」「美」ということらしい。
さすがに貞節さんは、ちゃんと髪を結わえて、宝石類も身につけていない。
それと対称的に快楽さんは豪華な宝石をつけ、髪も乱れるままである。
そして美さんは、その両方をあわせ持った姿を描いている、とのことだった。