山の旅 明治・大正篇

山の旅 明治・大正篇 表紙

 

山の旅 明治・大正篇
近藤信行 編
岩波文庫 緑170-2
2003年9月17日 第1刷発行

明治から大正にかけて、登山について書かれた文集です。
有名な作家も登場します。
今以上に厳しい、当時の様々な形の山登りの描写がこちらに迫ってきます。

乙西掌記(抄) 松浦武四郎

旅の旅の旅 正岡子規

寒中滞岳記(十月一日より十二月廿一日に至る八十二日間) 野中到
富士山の観測所における冬の自然の厳しさ
三歳のお子さんを郷里の父母に託して妻も登ってくるが、富士山頂の特有とも称すべき浮腫に冒されたりする。

 

知々夫(ちちぶ)紀行 幸田露伴

二百十日(抄) 夏目漱石
阿蘇山が舞台

西蔵旅行記(抄) 川口慧海(えかい)

尾瀬紀行 武田久吉

利尻山とその植物 牧野富太郎

木曾御嶽の両面 吉江喬松 

白峰の麓 大下藤次郎
甲斐の白峰を描こうとする画家

 

峠に関する二、三の考察 柳田国男
一 山の彼方
ビョルンソンのアルネの歌
諾威(ノルウェー)と日本の山の違い

二 たわ・たを・たをり
「たわ」「たをり」山の土の最も多く消磨した部分、鞍部

三 昔の峠と今の峠
昔の山越は深く入って急に越え、今の峠は浅い外山から緩く越える。

四 峠の衰亡
汽車は誠に縮地の術で、迂路とは思いながら時間ははるかに少なく費用は少しの余計で行く路があって見れば、山路に骨を折る人の少なくなるのは仕方ない。

五 峠の裏と表
表口は登りに開いた路。なるべく川筋の岸を行く
裏口は降りに開いた路。麓の平地に目標を付けておいて、それを見ながら下りる方が便。

六 峠の趣味
自分の空想は一つ峠会というものを組織し、山岳会の向こうを張り、夏季休暇には徽章か何かをつけて珍しい峠を越え、その報告をしゃれた文章で発表させることである。何峠の表七分の六の左側に雪が電車の屋根ほど残っていたなどというと、そりゃ愉快だったろうと仲間で喝采するのである。さぞかし人望のない入会希望者の少ない会になるであろう。冗談は抜きにして峠越えのない旅行は、正に餡のない饅頭である。
(柳田さんらしからぬ、諧謔に富んだ文章ですね。タモリさんの坂道学会を思い出しました)

 

越中劍岳先登記 柴崎芳太郎

穂高岳槍ヶ岳縦走記 鵜殿正雄

槍ヶ岳に登った記 芥川竜之介

赤城にて或日 志賀直哉

平ヶ岳登攀記 高頭仁兵衛

皇海(すかい)山紀行 木暮理太郎

日本アルプス縦断記(抄) 長谷川如是閑
針木峠という名は、神経に一種の刺激を与える響きを持っている。

 

山恋ひ(抄) 宇野浩二

欧州アルプス越え(抄) 加賀正太郎

アルペン行(抄) 鹿子木員信
宿屋で頼んだ朝のコーヒーの勘定書での欺きや、宿屋の者の他の客人に対する不親切と無礼から瑞西人に対し怒る筆者

スウィス日記(抄) 辻村伊助

火と氷のシャスタ山 小島烏水
筆者にとっては、アメリカで最も多く心を惹かれる山がシャスタ山