羊皮紙の世界 薄皮が秘める分厚い歴史

羊皮紙の世界 薄皮が秘める分厚い歴史と物語 表紙

 

羊皮紙の世界
薄皮が秘める分厚い歴史と物語
八木健治 著
岩波書店 発行
2022年8月30日 第1刷発行

中世ヨーロッパの歴史をひもといていると、必ず出てくる羊皮紙。
この本では、羊皮紙の作り方から、羊皮紙が使われている文物まで、馴染みの薄かった羊皮紙のあれこれについて、豊富な写真とともに、わかりやすく説明しています。

プロローグ 羊皮紙発祥の地
プリニウスの著書『博物誌』に、羊皮紙は紀元前二世紀、ベルガモン(現在のトルコ西部のベルガマ)で生まれた、と記されている。
パピルスが使えなくなった「緊急事態」に際しての代用品だった。p2

 

第一章 羊皮紙作りの世界
羊皮紙を作るためだけに、動物を殺すことは、まずなかったと思われる。メインはあくまで「肉」
余った皮をレザーや羊皮紙に使った。p4

「羊」皮紙と書かれているが、ひつじ限定ではなく、ひつじ、仔牛、山羊の皮が使われている。

第二章 羊皮紙写本の世界
羊皮紙ならではの修正方法として、間違えた文字をナイフで削る方法もあった。間違えたらインクが乾くのを待ち、ナイフで文字を「カリカリッ」と削る。p40

活版印刷により、写本制作という産業だけでなく、羊皮紙という素材も衰退に追いやった。羊皮紙には印刷用の油性インクが染み込みづらいため、紙と比べ印刷後のインクの乾燥にかなりの時間がかかる。p54

 

第三章 非西欧圏の羊皮紙文化
・磨き抜かれたビザンツの羊皮紙
アルメニアの羊皮紙聖書
アルメニアキリスト教徒が大部分を占める。世界ではじめてキリスト教を国教と定めたのはアルメニア王国、西暦301年。
ローマ帝国キリスト教を国教とした392年よりも前
・細かすぎる羊皮紙に関するユダヤの掟
ユダヤ神秘主義カバラ
エチオピアの聖書と護符
エチオピア(当時はアクスム王国)では西暦325年頃キリスト教が国教に定められた。
コーランに宿る真理
羊皮紙のコーランは多くが横長の判型であること。キリスト教の聖書などと明確に区別するために横長に変えた。

 

第四章 羊皮紙文書の世界
活版印刷後の羊皮紙の活躍の場
・政府や役所が発行する公文書
・会社や個人の約束事を記した契約書など「証書類」

イギリスにおいて、つい最近の2016年、「法律を羊皮紙に印刷して保管する」という決まりは、イギリス国会で正式に廃止された。
しかし紙に印刷した法律の「表紙」だけは羊皮紙にしましょうということが2017年に決まった。p111