冬のシャンティイ城

パリ北駅からシャンティイに行く。
ここは人口1万2千人ほどの小さな街だが、シャンティイ城、高級競馬場、そしてホイップ・クリームで有名である。またテレビのフランス語講座を見ている方ならご存知の、ドミニク・シャニオン氏の出身地である。
駅を降りて、観光案内所に行くが、閉まっていた。日曜日で、なおかつシーズンオフならよくあることである。仕方なく家から持ってきたガイドブックの小さな地図を頼りに城をめざす。
たいへん寒いが、天気が非常にいいため、あまり気にならない。空がどこまでも青い。
並木道を抜け、競馬場の側の歩道を行く。
途中馬の博物館があるが、時間の都合もあり、そのまま城に向かう。
入り口で入場券を買い、中に入る。まず左側の城の中に入る。ここはコンデ美術館になっている。狭い中に、名画の数々が展示されている。ラファエロの小品「三美神」や、ドラクロワ、アングルなどの作品も展示されている。
見終わった後、土産売り場で気に入った絵やシャンティイ城の絵葉書を買う。
外に出て、城の前の庭園に出る。運河を背景に整った形の庭園である
冬なので特に花もなく、一部の彫像は覆いをしたりしていたのは仕方がない。
更に庭園全体を見る。西側は、木立と小さな池になっている。東側は林のようで、その間に一直線に伸びる道がある。木々がなぎ倒されているところもあった。前年の大嵐の跡らしい。
一通り見終わり、城を後にする。帰りも競馬場に沿って歩いていく。サイクリングやウオーキングをしている人とすれ違う。
駅前に着く。おなかがへっていたので、パンを買い、食べながら電車を待つ。
帰りの電車にのる。結構混んでいた。空席をみつけてさっと座るが、隣の人を見てどきりとする。
アメリカなんかの暴走族の親分が、そのまま年老いたようなのが、酒瓶と共にいたのだ。
しまったと思ったが仕方がない。じっと座る。
しばらくすると、こちらに向けて、袖をめくり、自分の刺青を見せてきた。
何の事かわからずうろたえていると、指で手首を指し示す。
単に時間を教えてくれとのことだったのだ。
あわてて、自分の時計を見せる。おじさんは満足して、「メルシィ」と酒やけした、地獄から響くような声で言った。
ほっとして、思わず、「ドゥ リヤン」と言ってしまう。
教科書でこの表現はぞんざいな言い方だと教わっていた。「ジュヴザンプリ」と言わなければならない。
ひやっとしたが、そのおじさんは「フウォフウォフウォ」と愉快そうに笑っていた。
気まずさだけが残ったものの、その後は何もなく、無事パリ北駅に着く。