マクロン大統領の言う「40年に及ぶ沈滞」とは?

【AFP=時事】(更新)フランスのエマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)大統領は10日、国民向け演説を行い、最低賃金を来年から月額100ユーロ(約1万3000円)引き上げると発表した。同国を揺るがした「ジレ・ジョーヌ(黄色いベスト)」運動のデモを受け、大きな譲歩案を示した形だ。
 
 今年の最低賃金は、税引き前で月1498ユーロ(約19万3000円)、税引き後で1185ユーロ(約15万2000円)と設定されていた。マクロン大統領は、賃金引き上げに必要な資金を負担するのは企業ではないと説明。また、自らの政府が導入し批判を集めた定年退職者らに対する増税策の大部分を撤回した。

 マクロン大統領は今回の演説で、自身の指導スタイルに関する批判への対応として、普段よりも謙虚な姿勢を示し、「私の発言が一部の人々を傷つけた」と認めた。

 一方で、国内の地方部や小規模な町に暮らす低所得者層が主体となって行われた抗議行動は、長年にわたる問題に起因すると強調。「人々の苦悩はきのうに始まったことではない。われわれはそれに慣れてしまっていた」と語り、「40年間に及ぶ沈滞が表面化した」という見方を示した。【翻訳編集】 AFPBB News

記事の最後に「40年間に及ぶ沈滞」とありますが、どのようなことを意味するのでしょうか?
単純に40年前を振り返ると1979年。この年辺りは特に大きい政治的な動きは有りません。
おそらく1981年の社会党ミッテラン大統領選出からの流れだと思われます。
当時、23年ぶりの左翼政権誕生ということで、「赤いバラが咲いた」というきれいな言い方がされました。
そのミッテラン大統領の経済政策は、当時の英米で隆盛だったサッチャリズムレーガノミクスと呼ばれた「小さな政府」とは対照的な「大きな政府」の実験でした。
マクロン大統領が廃止した富裕税もミッテラン政権で導入されています。
その他、企業の国有化とか、勤労者の権利拡大などの政策を行いましたが、経済的には改善されなかったようです。
マクロンさんにすれば、そこを根源とする長年の悪い流れに棹する改革を行いたかったということでしょう。
しかし激しいデモ(一部は単なる暴徒団による暴力もあるようですが)に遭い、道のりは困難だと言えそうです。

(フランス現代史 渡邊啓貴 著 中公新書 を参考にしました)