基本はバッハ(原題 Bacically Bach)
基本はバッハ
ハーバート・クッファーバーグ 著
横山一雄 訳
音楽之友社 発行
1992年6月20日 第一刷発行
この本はアメリカ人音楽評論家による、軽いタッチのバッハの入門書です。
原題はBacically Bachです。BasicallyではなくBacicallyとして韻を踏んだ図書名になっています。
人間そして音楽家としてのバッハの一生と音楽を、バッハの逸話、作品、数々のデータをもとに描き上げるかたわら、バッハ演奏のスペシャリストや現代風にアレンジされたバッハ演奏、バレエ化された作品など、現代におけるバッハも取り上げています。
問:バッハはハンガリー人だったでしょうか?
答:違います。しかしバッハ自身は自分ではそう思っていました。p31
バッハは外部から曲を借用しただけでなく、自分の曲をさかんに転用、循環している。
どういう理由からか、音楽学者たちはこのような作品を「盗用」とは呼ばずに「パロディ」ー「風刺的、またはこっけいなもじり」といったこの語の一般的な意味から考えると適切とはいえないーと呼んでいる。p95
(確かにバッハに関する別の本を読んだ時、このパロディという言葉がやたら出てきて、戸惑った思い出がある)
バッハは一生涯正統なルター派信者で通した。
バッハは、音楽は彼にとって、宗教上の信仰のもっとも深い表示であるという以外になんら理由はなかったにせよ、音楽を重んじるルター派の正統主義者にくみしていた。p98
バッハが自分のことをドイツ人として言及したことは一度もない。今日われわれの手元に残っているバッハが書いたものの中で、民族主義的な、あるいは盲目的愛国主義の言及が、さりげなくなされているという事実が全くないのは興味をそそる。
バッハ時代のドイツは小国と領土の集合体で、互いの利害が一致せず、おそらくささいなことで争っていたようである。
しかし彼の死後まもなく、バッハのドイツ化が始まった。その頃すでにドイツのナショナリズムが台頭し始めていた。p146-147