フランス州議会選の新聞記事より

フランス州議会選について記事を引用いたします。

<仏州議会選>廃鉱の街、極右浸透 既存政党に不信

毎日新聞 12月11日(金)21時30分配信

 6日のフランス州(地域圏)議会選第1回投票で大きく支持を伸ばした極右政党、国民戦線(FN)のマリーヌ・ルペン党首(47)が出馬したノールパドカレー・ピカルディー州には、炭鉱を掘った残土を積み上げたボタ山が散在していた。FNの候補に移民問題を聞くと「私は人種差別主義者ではない」と声を荒らげた。【アビオン(仏北部)賀有勇】

 移民排斥を訴えるFNは第1回投票で同州の最多得票を得た。13日に行われる第2回投票でも勝てば、ルペン氏が首長である議長になる可能性が高い。

 パリの北約180キロ。かつて炭鉱でにぎわった人口約1万8000人のアビオン市を10日に歩いた。赤レンガ造りの家々が並ぶ市内には、ルペン氏の選挙ポスターが奇麗に掲げられていた。破られたり落書きされたりしていることの多いパリとは大違いだ。

 もともとは炭鉱労働者組合との結びつきが強い左派の地盤。市長は1936年から現在まで共産党だが、FNが徐々に支持を広げている。第1回投票ではFNが42%を得票し、32%の共産党を引き離した。

 朝市が開かれていた市の中心部に行っても、移民系住民はほとんど見当たらない。これもパリ周辺とは異なる光景だ。野菜を売る露店の前で、ようやく見つけた乳児を抱えたモロッコ系移民の女性(23)は、FNの勢いについて「ショックだ」とだけ小声で答えた。

 その横で、6人組の男性がビラをまいていた。

 FNの候補、ローラン・ダソンビルさん(37)と支持者だった。ダソンビルさんは、「(不法移民は)いずれここにも来る。彼らに金を使うのではなく、困っているフランス人に使うべきだ」と話した。

 ルペン氏が党首になるまでは共産党員だったダソンビルさんは、FNの政策は移民排斥だけではないと強調。最低賃金の引き上げなど左派と近い政策も多く、さまざまな支持者を取り込みやすいと話す。フランスの専門家の多くは、既存政党への不信をFN躍進の背景に挙げてもいる。

 80年代までに炭鉱が閉山となって、地域経済の落ち込みに苦しんできたアビオンも例外ではない。50年以上も共産党社会党に投票し続けてきたという主婦、アンマリさん(72)は「生活が改善されないことに失望した有権者が(FNに)票を託している。FNを好きではないが、投票する人を責めることもできない」とため息をついた。

 アビオンから東へ10キロ弱のエナンボーモン市は、市長もFN党員だ。

 市役所の階段で友人と話していた主婦で2児の母、ルディビンさん(23)に話しかけると、「この国に移民の居場所はない。自分たちの国に帰して、国境を閉鎖すべきだ。移民がいなかったらテロだって防げたかもしれない。私はマリーヌを全面的に支持する」。まくし立てるように話す彼女の勢いに圧倒され、返す言葉がなかった。

(もともとは左派の地盤だったところが、それでは一向に問題が解決せず、一層悪くなるばかりなので、国民戦線に鞍替えした、という人も多いような気がします。今回のテロのせいだけではなく、根の深い問題です)


  ◇13日に第2回投票

 フランスには本土13州(地域圏)と海外4州がある。州議会選は比例代表方式の2回投票制だ。第1回投票で過半数を獲得する政党がない場合は、得票率10%以上の政党が第2回投票に進む。5%以上得票した政党は、10%以上得票の政党と名簿を一緒にすることで第2回投票に進める。6日の第1回投票では仏本土13州のうち6州で極右政党の国民戦線(FN)が得票率で首位になった。

 第2回投票では第1党に議席の25%がまず割り当てられ、残りの75%を第1党を含めた政党で得票率に応じて分ける。議会運営を安定させるためで、ほとんどの州で第1党が過半数議席を持つことになる。首長である州議会議長は通常、第1党の名簿筆頭の候補者が選ばれる。

<仏州議会選>大統領、反極右呼びかけ 13日に第2回投票

毎日新聞 12月12日(土)19時15分配信    

 【パリ賀有勇】フランスで州(地域圏)議会選挙(比例代表2回投票制)の第2回投票が13日行われる。第1回投票では「反移民」を掲げる極右政党、国民戦線(FN)が本土13州のうち6州で首位となったが、社会党を率いるオランド大統領(61)はライバル政党への投票を呼びかけてFNの第1党を阻止する構えで、FNのマリーヌ・ルペン党首(47)は10日、集会で「知的なテロリズムだ」と非難した。

 第1回投票では、FNが28%を得票、サルコジ前大統領(60)の共和党・右派連合が27%で、社会党・左派連合23%を上回った。FNは、ルペン党首とめいのマリオン・マレシャルルペン氏(26)の選挙区でそれぞれ41%を得票し、共和党社会党を大きくリード。オランド氏は、この2選挙区で第2回投票に候補を立てないと表明し、ライバルの共和党への投票を呼びかけた。また、多くの選挙区で環境政党共産党などの左派政党と連立を組んで第2回投票に臨む。

 最新の世論調査では、社会党が出馬を見送った2選挙区では、FNの支持は依然高いが、共和党が第1党となる見通しだ。ルペン氏は、仏テレビのインタビューで、「このような選挙システムは非民主的だ」と非難した。

(第二回投票に候補者を立てないとは、社会党・左派連合の捨て身の勝負ですね。単純に左派票が全て共和党・右派連合に流れて、国民戦線票がそのままなら、国民戦線が第一党として、ボーナス議席に加えて州の首長になるのは避けることができます。しかし当地の左派の州議会議員が野党といえども全く居なくなることになってしまいますからね。日本では考えられないことです。
二回投票制は極端を配するという利点もあるようですが、ルペン党首のおっしゃるように、「非民主的」ともいえるかもしれません。もちろん、民主的であれば万事OKとも言えないでしょうが)