ゲーテ 親和力(集英社文庫ヘリテージシリーズより)

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このたび、この集英社文庫ポケットマスターピースゲーテを買った理由の一つに、巻頭の白黒写真がありました。
それは聖オーディールの名を冠したアルザスのオディーリエンブル修道院の写真でした。上の写真は自分がここを訪問したときに撮ったもので、単行本の写真とほぼ同じ角度でした。
懐かしい思い出が甦ってきて、「親和力」という小説は、ここに関する話なのかと思ってしまいました。
しかし単に登場人物の一人であるオティーリエの伝説上のモデルが、ここの聖オーディールに過ぎないというだけでした。
この「親和力」というゲーテの小説、表面上の話は田園に住む上流階級の人々による出来事が綴られています。
しかし読んでいきながら、妙に普通の動詞とかに訳注が多いのが気になりました。
いちいちページをめくって見るのもめんどくさいので、そのままとばして読んでいました。
しかし解説を読んでびっくり。
この作品は男女の不倫を描くことによって科学の歴史を諷刺しているそうです。
小説の原文の言い回しには、裏の意味が隠れており、恋物語は、新旧の学説や実験、科学者たちの生涯などを戯画化してつなぎ合わせただまし絵になっているそうです。
その解説や訳注を読んで、目がくらくらしてきました(笑)
素人目にはかなりのこじつけもあるように感じたのですが、長年の研究の成果のようなのでおそらく正しいのでしょう。
この「親和力」は古典でなく、ある種の前衛小説、実験小説のような感じですね。
ゲーテさん恐るべし(笑)