ピエロ・ディ・コジモによる「シモネッタ ヴェスプッチ」(シャンティイ コンデ美術館)
下部にシモネッタの記銘があるものの、内容については不自然。
ヴィーナスなどの女神ならともかく、当時実在の貴婦人のヌードを描くことは考えられなかった。
また首もとのヘビ
もしヘビを永遠の生命の象徴とするなら、尻尾をくわえる形で、永遠の循環である円をなしているのがエジプト以来の伝統である。しかしこの絵はそうでない。
ラファエロによるドーニ夫妻の肖像二作
フィレンツェの裕福な新興の毛織物商人で、共和国の政治にも関わっていた夫のアーニョロ・ドーニ
野心家としてまるで画家を睥睨するかのごとき強い視線をこちらに送っている。
その妻マッダレーナ
素描では華奢に描いていたが、実際にはふくよかに、あるいは肥満した肩に見せ、顔もまたふくよかで、大きな眼を画家からわずかにそらせる風に描いている。その意図は?
貴族出身でありながら商人の妻となっていた女性の高慢さか?
たくましい人間の真実か?
この絵が描かれる3年前に結婚していることから、マッダレーナの懐妊か出産を記念して制作されたものであるかもしれない。
そう感じさせるほどにこの肖像は威厳に満ちているのである。