デブ猫スマイリーのサイバー胃袋①

 OLのA子さん、一日の仕事が終わり、帰る前にネットを見ていると、いつも愛読しているベルギー在住の方のブログから、小太りパンダ柄猫スマイリーの画像を見つけました。
 のんびりお昼寝しているスマイリーの姿を見て、「きゃ!かわいい」と気に入り、早速自分の職場のパソコンのデスクトップの背景にしました。
 こうしてA子さんのパソコンに入り込んだサイバースマイリー、真っ暗な中でむくっと目を覚まします。
 サイバースマイリーでもやっぱりスマイリー。目をパチパチ開いてパソコンの中で食べ物を探し始めます。
 すると、大きなクッキーが目に入りました。早速それをばりばり、もぐもぐと食べ始めるのでした・・・。
 
 翌朝出勤してパソコンを使おうとしたA子さん、どうも操作が重いのに気づきます。
 そのうちパソコンが動かなくなってしまいました。
 慌ててパソコンメンテナンスの担当者にみてもらいます。
 「どうやらハードディスクの容量がほとんどなくなっていますね・・・」メンテの人はつぶやきます。
 「何か新しいプログラムを入れましたか」と聞かれましたが、特にそんなことはありませんでした。
 「最新型のハードディスクに取り替えておきますからね」と言って彼はパソコンを修繕してくれました。
 「はあ、どうも、ありがとうございます・・・」とA子さんは腑に落ちないような感じで答えました。
 そうなんです。
 実はサイバースマイリーがヴァーチャルに食べたクッキーのようなものは、ハードディスクだったのです。
 そのせいで、容量を食ってしまい、動かなくなってしまったのです・・。
 
 その晩、サイバースマイリーが目を覚ますと、クッキー、つまりハードディスクは最新型になったので、頑丈に保護されて食べれなくなってしまいました。
 「しょうがないニャー・・・」
 スマイリーは食べ物を探しに、A子さんのパソコンからケーブルをつたって、会社全体のホストコンピューターシステムに向かっていくのでした。
 
 場面はある怪しげなオフィスに変わります。
 そこでは、人相の悪い男たちがこそこそ話し合っています。
 「実はB社から裏の仕事を依頼されてね・・・。ライバルのC社にコンピューターウイルスを流して、システムを破壊してくれないかと頼まれたんだ。」
 C社とはA子さんの会社のことです。
 「わかりました。早速今晩流しましょう。われわれは常に最新のウイルスを作っているので、よっぽど最新のウイルスバスターを導入していない限り、大丈夫でしょう。」
 男たちは不気味に笑うのでした。
 
(続く)