バルザック 風俗研究

イメージ 1
 
バルザック 風俗研究
山田登世子 訳・解説
藤原書店 発行
1993年4月25日 初版第2刷発行
 
サン・シモンの思想の一つに、軍事的征服によって封建貴族となったフランク人と被征服者ガリア人との闘争としてフランス史を捉える見方があり、たとえば七月革命ガリア人の報復と見る考え方もあった。バルザックも当時のこうした思潮を受けていた。
 
国民がそれぞれの時代にどんな服装をしていたか調べてみる気を起したら、きわめて絵画的な真のフランス史が出来上がることだろう。
フランク族の長髪、僧侶の剃髪、農奴の坊主頭、ポポカンブーの鬘、貴族の髪粉、1790年のティトゥス風の短い髪型
 
狂人とは深淵を見つけてそこに落ちてしまう人間のことである。
落ちた物音を聞きつけると、学者が物差しを取りだして、穴の深さを測る。そして全世界に向けてそのサイズを言った後、家庭に戻って暮らす。
学者のモノサシと狂人の目眩と、ここで私は常にこの二つの中間に立ちたい。
 
どの時代にも自分の時代の秘書を務めた天才がいる。
いずれも時代の語るままを筆にした天才であった。
 
254.5人の歩き方を観察したバルザック
しかしその中には美しく自然な歩き方をしている人は一人もいなかった。
絶望して家に戻り、窓辺からエトワール広場の凱旋門を眺める。
そしてささやかなわが庭に目を落とし、ヤギと子猫、犬を見る。
彼ら動物の自然で美しい動き。
考える人間は堕落した動物である、というルソーの言葉
不自然な運動はそもそもその人の性質から来る。
 
蒸留酒、砂糖、紅茶、コーヒー、タバコ
五つの近代興奮剤
これらは渇きと発汗と「粘液」の消失と生殖能力の喪失をもたらす。
すべての不節制は粘膜を損ない、命を縮める。
それでもバルザックはイタリア劇場で飲み比べをしたり、コーヒーを多量に摂取したりしている。