米原万里を語る

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米原万里を語る
編著 井上ユリ  小森陽一
執筆 井上ひさし  吉岡忍  金平茂紀
2009年6月15日 第2版発行
 
実の妹と、四人の「義理の」兄弟が語る米原万里像。
 
米原万里の大きな仕事
① 同時通訳者としての米原万里。通訳という仕事をしっかり掘り下げ、なおかつ面白く書きあげた人
② エッセイストとしての米原万里。彼女の特徴は、真実に対して誠実で、正義に対して率直で、力あるものに辛辣で、その上めちゃくちゃ面白い。
③ ロシア語を中心に英語をはじめいろいろな言葉ができた人。そして何よりも日本語がとても上手な人。
 
プラハソビエト学校での教育
たとえばボルガ河について学ぶ。先生の講義のあと、次の時間にあてられた子が先生の言ったことや教科書に載っていることをちゃんと話しても4しかとれない。それに加えて、自分が何か調べてきて、しかもそれがちゃんとみんなにわかるように説明できないと5にはならない。
 
自分の国の言葉、自分の国を本気で愛するという思考モデルをつくった一人が米原万里。批判しながらさらに愛していく方法。そしてそういう方法で日本を透して世界を見て、世界から日本を見る。
べたついた愛国主義ではなく、夢見るような世界主義でもない。笑いながらの透徹した現実主義。
 
米原さんの日本人離れしたところは、彼女がいきなり核心に入っていくという凄さ、力強さである。
日本社会の側には、小さな出来事の中にたえず細やかな気持ちを働かせなければならない。いわゆる「空気を読む」ことが必要。しかしそれは米原さんがもっとも苦手としたものではないか。
国際ペン大会での米原さんの発言。中国からの亡命作家たちに対し、あなたたちは普通の人間たちとともに苦しんでいないのではないか、またさらには作家としての資格がないのではないか、と訴える。
そういうことをあっけらかんと言える、国籍や文化をこえた作家としての強さ。