大世界史10 神の国から地上の国へ
著者 西村貞二
文藝春秋 発行
昭和43年3月25日 初版発行
それからおよそ千年を経た14、5世紀、ヨーロッパの中世が終わって近代の幕がきっておとされる。その形成においては、ルネサンスと宗教革命が、ヨーロッパ近代の背骨を形づくる。そして国民文化が発達の緒についた。
1293年ごろダンテが「新生」を書き、1550年、ヴァザーリが「美術家伝」を書いた。
この間の3世紀が、イタリアのルネサンス時代である。
著者がフィレンツエでマキャヴェリの肖像を見たとき、そこにひとりの率直な男を見た。
マキャヴェッリ曰く「あらゆる政治の方策は、人間が生来悪であるという根本事実から出発しなければならない」と。
マキャッヴェりは人間をあるとおりに見て、見た通りに言ったにすぎないのではないか。
イタリアのルネサンスは16世紀のはじめより衰退のきざしをあらわし、中心はイタリアから西ヨーロッパにうつる。
ルターは信仰の内面性を重んじ、知識を敵視する「信仰一筋」であった。
グリューネヴァルトは中世的神秘の夢想家であり、ドイツ的本質を一層よくあらわしたとはいえないだろうか。
しかしプロテスタンティズムの現世肯定が生み出したものは、ありふれた職業人や専門人であった。
宗教戦争は、西ヨーロッパ諸国が絶対主義国家へ発展する途上で、宗教に名を借りた政治紛争、しかも国際的規模の政治紛争であった。