セザンヌ(ガスケ著 岩波文庫)

 
 
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ガスケ 著
2009年4月16日 第1刷発行
 
プロヴァンスの画家、セザンヌについて、第1部「私の知ることやこの目で見たこと」として、青春、パリ、プロヴァンス、老後の4章に分けて、更に第2部で「彼が私に語ったこと」として、モチーフ、ルーヴル、アトリエの3章に分けて叙述している。
第2部の語ったことでは、あたかもセザンヌとの会話をそのまま採録したかのように書かれている。
 
ヴィクトワール山のふもと、小麦の平野の中、松とオリーヴの立ち並ぶ丘陵に囲まれたエックス(アン・プロヴァンス)にセザンヌは生まれた。
ウェルギリウスによって歌われたような歓喜、紺碧色のおおらかさがあたり一帯にやすらかでかつ力強い雰囲気をつくりだしている。
 
セザンヌの全生涯は、大きな突進のあとに来る深い絶望、無我夢中に張り切った後に来る真っ暗な落胆が交互に続くというようなものであった。パリにおいても、楽しくもあり、苦しくもあり、確信に貫かれたり、絶望で暗くなったりした。
 
ルーヴルの中の絵を興奮しながら解説していくセザンヌ
フローベールの「野を越え砂浜を越え」の旅行の中で、葬式の話や雨みたいに涙をこぼす老婆の話を読むたびに、クールベのことを思い出すというセザンヌ
ルーヴルでの最後の場面では、クールベを狂人のように絶賛するセザンヌ
 
セザンヌの姿は、あたかもコメディアンが芸術家を演ずるかのように滑稽で、なおかつ奇妙奇天烈であるが、プロヴァンスの自然、ウェルギリウスなどの文学、ゾラやピサロなどの文学者や同じ画家との交流、をもとに、限りない情熱と苦悩をまき散らしながら、独自の絵画美を追求してきたのであった。