スペイン・ポルトガルの古城(新装版)
太田静六 著
吉川弘文館 発行
2010年10月1日 新装版第1刷発行
城郭はそれを必要とする重要な場所に営まれるので、自然と重要地帯に集中する。これに対してイベリア半島では、半島の全域にわたってほぼ万遍なく設けられている。また量も多く、2000個近くに達するといわれる。
この理由として
半島全体の地勢による。
著者は国中に多数の城が存在していたから、と考えている。
写真や文を読んでも、荒涼とした中の小高い所に頑丈そうな城が建っている印象が強い。井戸を掘ってもどうしても水が不足するので、貯水槽を備えているところが多い。
セゴヴィア県のツレガノでは城郭教会という珍しいものが見られる。これもやはり国土回復運動という特殊な事情から生じたものと思われる。
コルドバ県で偶然見張り塔のようなものを発見する筆者。岩山上にただ1基の円塔が建つだけのもの。それはあまりに印象的で脳裏に深く刻み込まれたものだった。
ポルトガルの城壁市オビドスは現在も中世以来の城壁で囲まれ、その中で生活するという珍しい存在である。更に道路や家並みにも中世以来の面影が残り、城壁だけでなく主城郭まで現存する。