ルネサンス 美術と詩の研究
ウォルター・ペイター 著
富士川義之 訳
1993年12月10日 発行
19世紀の後半、イギリス人のペイターによって書かれた芸術批評です。
ルネサンスという時代の画家、彫刻家、詩人などを通しての文学観、芸術観
彼自身はルネサンスというものを12世紀のフランスに始まり、16世紀の中葉のフランスで終わるという説を唱えています。
12世紀の終わりにかけての突如とした感情の強烈な出現。中世時代の粗野な力強さが、たとえばゴシック式の尖塔アーチ建築、プロヴァンスの詩などにより、優美なものと変化していき、それが古代ギリシャ世界の完璧な優美さを追究するようにと促したのではないか、と書かれています。
この本においてはミケランジェロやダヴィンチなどルネサンスを語る上では絶対に外せない超有名人から、1525年生まれのフランスの詩人デュ・ペレや、1717年生まれの学者ヴィンケルマンなど、一般にはあまり見ない人物も登場します。
最後にデュ・ペレがラテン語からフランス語に訳したといわれる詩を載せておきます。小麦をふるい分けるときに、ふるい手たちが、風がそっと麦粒にあたるようにと呼びかけながら歌う歌だと想像されているそうです。
そしてデュ・ペレの故郷でもあるフランスの穀倉地帯ラ・ボース(シャルトルあたり)を大きな納屋で、この作業を初めて目にした子どもが感じる喜びを、耳に聞くような思いがする、と述べられていました。
麦篩いから風に寄せて
翼ひろげて
世界を飛び、
穏やかな囁き声で
緑の影を
そっとゆする
いとも身軽なおまえに、
捧げようこのすみれ。
この百合と、この小花と、
ここにあるこの薔薇を。
この深紅の薔薇は
鮮やかに咲いたばかり。
そしてこのアネモネも。
おまえの香ばしい息で、
この野を吹いておくれ
この住居を吹いておくれ。
暑い日盛りに、
私が精を出して
麦を篩っているときに。