イタリアをめぐる旅想
河島英昭 著
1994年6月15日 初版第一刷
1980年~81年にかけてイタリアを逍遥した思い出を綴る。その中には常に著者が14年前に同じようにイタリア各地を訪問した思い出がオーバーラップしている。
正体不明の、わからずやの、厄介なおのれという存在。
異国を旅することにより、それを正しく向き合うことができる。
ただし一人きりで歩くこと。そうすると別種の時間が流れ出ていく。ある種の死に似ている。
それから著者の心はダブリンに飛び、14年前の翌年に訪れたダブリンの町を思い出す。リフィ河のほとり、ダブリンはまさにトリエステだった。
ロレンスのあとを追い、サルデーニャを訪れる。
マンダスの町で、1921年1月7日、ロレンス夫妻が一泊したという建物を見上げる。途中で車両が切り離されていく様子も、乗客との他愛のない話もいまと同じだった。